第2話:バイト先に、色々と目立つ競馬ガチ勢がいました

「はーい、新人くんこっちお願い」


 振り返った瞬間、俺――桐生こういちは一瞬言葉を失った。


「……」


 エプロンの前面が、やけに主張している。

 というか、主張しすぎている。


「? どしたの?」


 首をかしげる彼女――白石ひより。

 その動きに合わせて、視線も強制的に上下する。


「い、いや……よろしくお願いします」


「こちらこそー。あ、ひよりでいいよ!」


 距離、近い。

 そして柔らかそう。

 物理的に。


(……集中しろ、俺)


 競馬で稼ぐと決めた男が、ここで動揺してどうする。



 休憩中。


「桐生くんさ、競馬やる?」


 唐突すぎる質問と同時に、

 胸ポケットから競馬新聞がはみ出ている。


「……ガチですね」


「えへへ」


 自覚がないのが一番タチ悪い。


「私、穴党なんだよねー。人気馬、だいたい信用してない」


「それ、長期的には負けますよ」


「うっ……痛いとこ突く」


 ひよりはむにっと頬を膨らませる。

 その動きでも、やっぱり目立つ。


「じゃあさ」


 ひよりが身を乗り出す。


「今度、一緒に競馬場行こ?

 私が穴、桐生くんが堅実。最強じゃない?」


「……理論上は」


「よっし決まり!」


 俺の返事を待たずに、話は決定した。


 ――後に俺は知ることになる。


 白石ひよりは、スタイルだけじゃなく、

 競馬の勘もとんでもなく“デカい”女だということを。

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