第3話
「みんな、食事中に悪いが聞いてくれ」
リトはそのまま全員に呼びかけた。そんなことを言われなくても皆が注目していた。なにせあれだけの騒ぎを一瞬で収めたのだ。誰が無視できよう。
「次の俺たちの出撃が決まった。3日後。ルーミ地区だ。今回の作戦の概要はこうだ…」
リトが作戦の説明を始めた。本来はこんな場所でするような話ではないだろうが、全員が集まるタイミングは昼時しかないから、一番合理的なのかもしれない。
「ルミア、ごめん」
横にいたロックが暗い声で言った。
「なにが?」
「さっき君がトーガに絡まれた時。僕には、何もできなかった……」
俯いて続けた。
そんなことを気にしていたのか。いや、優しいロックのことだから、当然といえば当然か。
「気にしないでよ。むしろ絡んだのは私のほうなんだから」
「リトは君を助けた」
「さっきの見たでしょ。あいつは特別なのよ。いっしょに考えないほうがいいわ」
そう。彼は特別。昔からそうなんだ。
同期たちは皆、仲間だが、ルミアにとってリトはそれだけじゃない。同じ村で生まれ育った幼なじみだった。
リトは昔から、なんでもできた。そしてそれをひけらかすこともなかった。優しく、頼もしい。彼について行けば、なんとかなる。ルミアはそう思っていた。今でもそうだ。
ただ……リトはいつも、何かを求めていた。それが何かはわからないけど。いや、物足りなさを感じていたのかもしれない。
そんなことを考えていたら、リトの話は終わっていた。あたりに再び騒がしさが戻り出す。次の戦闘について、皆が語りあっているようだ。そんな中、リトがこちらに近づいてくる。
「よっ。もうメシ食ったのか?」
さっきまでとは打って変わって、あっけらかんとした様子で話かけてきた。
ルミアとロックは首を横に振った。
「食べてないけど、いらない。さっきので食欲がなくなった」
「僕も」
げんなりと2人が言う。
「なんだよあれくらいで……でもルミアは相変わらずだな。ムカつく男に黙っていられないんだろう」
ケラケラと笑いながら言うリトに反論しようとしたが、よく考えればその通りだったので、ルミアは肩をすくめるだけだった。
「あいつ、どうなるの?」
ロックが聞く。
「ああ……とりあえず本部に連れていく。だが、たぶんお咎めなしだろうな。強い戦士の数を減らすわけにはいかないからな」
リトの言うことは、一瞬でもトーガと手を合わせそうになったルミアにはわかる。危険な男だけど、おそらく戦場にいけば活躍するだろう。あの狂気と戦闘力は、殺し合いにはうってつけだ。トーガに凄まれた時、冷静を装ったが、本当は冷や汗が止まらなかった。
かくいうこの男は、そんなやつをあっという間に制圧してみせたわけだけど。
「でもまぁ、できればあいつにはもう近づかない方がいいな。何しでかすかわからん」
そうありたいものだ。
「それより……さっき俺の話聞いてたか?いよいよおまえたちも実戦だぜ」
「うん。わかってる」
「怖くないか?」
「怖いよ。でもリトはもっと前から戦ってるでしょ」
「俺はいいんだけどよ……ルミア」
急に顔を向けられ、ルミアは少し焦る。
「おまえはさ……いや」
リトが言いごもるので、ルミアは追求した。なんだと言うのか。
「……なんでもない。とにかく、無理すんなよ」
リトはその後、寝たままのトーガを抱えて食堂を出て行った。
「実戦……」
遠くなるリトの背中を見送りながら、ルミアが反芻する。今までも戦場にいったことはあるが、しかし、それはあくまでサポート役としてであった。それがついに前線に立つのだ。
「ルミア……大丈夫?」
ロックが声をかけてくれたが、ルミアは返すことができなかった。
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