第5話 正月の朝

夜が明けると、すべては片付いている。

百鬼夜行の痕跡も、人狼の夜の緊張も。


残るのは、

畳に染みた香の匂いと、

小雪の姿。


「今年も境目ですね」


小雪はそう言い、微笑んだ。

それが水木荘の小雪と同じ笑みかどうか、善之は考えない。


考えないことが、この邸で生きる術だった。


摩耶山に初日の出が差す。

中川邸は、今日も“こちら側”と“向こう側”をつなぐ。


百鬼夜行と人狼の夜を越え、

人も妖怪も、また日常へ戻っていく。


だが境目は、消えない。

ここに在る限り。


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