第2話 百鬼夜行の刻

日が落ちると、邸の裏手――水木湯へ続く渡り廊下が、静かにざわめき始める。

湯気に紛れて現れるのは、客ではない。


河童は湯桶を抱え、

狐は草履を揃え、

名を持たぬ影は、柱に溶ける。


百鬼夜行は、行列をなして来るものではない。

ここでは「滲む」ように始まる。


善之は二階の欄干から、それを見下ろしていた。

数を数える気はない。

数えた途端、増えるからだ。


やがて、夜の底が抜ける。

摩耶山の山道から、列が現れた。


灯籠の火を持たぬ行列。

足音もなく、影だけが連なっていく。


百鬼夜行は、中川邸を通り過ぎるために現れる。

泊まる者は少ない。

だが、必ず一夜は通過する。


小雪は玄関に立ち、深く一礼した。

それが誰に向けたものか、善之には分からなかった。

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