目が覚めた先は海外の刑務所のような鼠色の部屋だった。私は息を深く吸って、酸いも甘くもない酸素をたっぷりと肺に取り込んだ。


 すこし、埃っぽくて鉄臭い。蓋のない簡易便所からの悪臭に鼻先をつまんで部屋をぐるっと見渡した。


 大手のインターネットカフェの個室くらいの狭さで、灯りが小さいせいで頭から降って来る圧迫感に押しつぶされそうになる。


『エントリー時間までにはまだ時間に余裕がある。ゆっくりしてくれて構わない』


 思わず肩が跳ねた。まるで張った糸に指ではじいたように。

 

 加工された声が降ってきて、反射的に声の震源を探す。


 あたりを見渡しても声の持ち主は見当たらない。


 よくみると天井の中心近くにドーム型の監視カメラと黒い箱、埋め込み型スピーカーがあった。あそこから様子を見ているのは間違いない。

 

 なにかが扉の取り出し口から滑り込んできた。


『紅いボタン、蒼のボタンどちらか好きな方を押してくれ』


 意図がつかめない。

『押したまえ』


 有無も言わせない空気間の圧に私は屈した。


 特に何も考えず、紅いボタンを押した。


 紅いというより、鮮血という言葉が似合う見ているだけで血なまぐさいにおいが鼻にまとわりつきそうな生々しいボタン。押した後はロックされたようで後から青色のボタンを押そうとしても押せないように仕組まれていた。


 直後、扉の鍵が開いた。


『進んで。皆、もう出ている』


 言われるまま、引き戸に手をかけて進んだ。

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