第7話


「お姉ちゃん、忘れ物ない?」


「うん、大丈夫だと思うんだけど……」


「なんか思い出したらすぐ連絡してよ、あたし届けるから」


「大丈夫……なはず……」



お姉ちゃんが鞄の中を漁り始める。心配だ。



「昨日確認してたじゃん、だいじょーぶだいじょーぶ」


「忘れ物常習犯のお前が言っても説得力ないな」


「おいやめろよ兄ちゃん!」




じゃれ合ってる紡とお兄ちゃんは放っておいて、あたしはお姉ちゃんの肩をトンと押した。




「隼翔くんそろそろ来るんじゃないの?」


「そうだね、そろそろ……」




お姉ちゃんが時計を見上げたとき、ちょうど玄関のチャイムが鳴った。お姉ちゃんがぱっと顔を綻ばせる。



その顔を見て、あたしもようやく自然に笑えるようになった。



「じゃあ、行ってきます。っていうか式場で会えるけどね」



お姉ちゃんが笑って立ち上がる。


そうしてそのまま玄関に向かおうとするのを、「お姉ちゃん」と引き留める。


お姉ちゃんはすぐに振り向いた。




「お姉ちゃん、今日何回も言うけど。……おめでとう」




あたしがそう言ったとき、お姉ちゃんは今まででいちばん綺麗な顔で、笑った。それは間違いなく、幸せな人の笑顔だった。



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