彼女いない歴=年齢27年、父親だけ先に始まりました
イミハ
第1話 誕生日にケーキを一人で食べてたら人生が宅配されてきた件について(返品不可)
27歳になった。
なったから何だという話だが、なってしまったものは仕方ない。
彼女いない歴=年齢、職業フリーター、間取り1K、壁は薄い、人生も薄い。
学生時代に女子から受けた数々の「軽いノリだよw」が全然軽くなかったせいで、今では女性と目が合うだけで心拍数が健康診断で怒られるレベルまで跳ね上がる体になった。
要するに女性恐怖症。
これも履歴書に書けたらいいのに、と思いながら、今日も書けない。
誕生日だった。
誰にも祝われないことは分かっていたので、期待もしなかった。
期待しない、落ち込まない、何も感じない。
これが大人の処世術だと、勝手に思い込んで生きている。
仕事帰りに、コンビニでショートケーキを一つだけ買った。
ホールケーキは虚無が増えるので禁止している。
ロウソクも買わなかった。
吹き消すときに願うことが何も思いつかないからだ。
アパートに帰り、電気をつけ、靴を脱ぎ、
誰もいない部屋で「27歳おめでとう、俺」と心の中で言ってから、
ケーキを食べ始めた、その時だった。
ピンポーン。
インターホンが鳴った。
心臓が跳ねた。
この時間に来るのはロクなものじゃない。
宗教、NHK、間違えた隣人、もしくは全部。
モニターを見ると、宅配業者だった。
箱を持っている。
覚えがない。
「……俺、何か頼んだっけ?」
頼んでない。
人生で「サプライズ」が来た記憶は一度もない。
恐る恐るドアを開け、サインをして、箱を受け取った。
中くらいの段ボール。
やけに、重い。
部屋に戻り、箱を前に正座した。
誕生日プレゼント?
いや、ない。
断言できる。
俺にそんなイベントは用意されていない。
カッターでテープを切る。
箱を開ける。
――中に、少女が入っていた。
思考が止まった。
比喩じゃない。
本当に止まった。
小学生くらいだろうか。
小さな体で、丸くなって、眠っている。
呼吸はある。
生きている。
そして一番意味が分からなかったのは、
添えられていた一枚のメモだった。
『あなた好みに育てて下さい。』
……誰だよ。
……何だよ。
……俺の「好み」って何だと思われてるんだよ。
パニックになりかけた、その瞬間。
少女が、ゆっくりと目を覚ました。
視線が合う。
俺は反射的に後ずさる。
女性、無理、近い、怖い、助けて。
しかし少女は、状況も俺の心情も全部無視して、
まるで生まれたばかりの赤ちゃんみたいに、
俺に抱きついてきた。
「……っ!?」
温かい。
軽い。
柔らかい。
違う違う違う、そういう意味じゃない。
脳内で全力で言い訳しながら、俺は固まった。
少女は小さな声で言った。
「……おとーさん?」
その瞬間、
27歳独身フリーターの誕生日は、
完全に取り返しのつかない方向へ転がり始めた。
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