下ネタがお好きな閻魔大王(2)
つまり……
ジャーニという物静かで敬虔な人格者が、彼女自身もそうあろう、そうあり続けたいと意識しながら過ごしてきた、この三年―――
閻魔から『ジャーニ、いつもありがとう』『お前はすごいヤツだ』『十王の中でも抜きん出ている』と絶賛され続けてきたこの三年―――
この閻魔は、心の中では彼女のことを『BL好きの腐女子』として認識していたのだ。
しかし、ダイバーシティを大切にする風潮の昨今―――
地獄の王たる閻魔だって、別にボーイズ・ラブを揶揄うなどという真似は決してしない。むしろ、閻魔も時折嗜む。そう、閻魔も嗜むのだ。BLをぺろぺろ嗜むのである。
だからこそ、閻魔は自身の過ち(ちょっとエッチなジャーニの所有雑誌を揶揄う)を反省した。高い知能指数の脳みそで、ぐるぐる反省した。
けれど、別に閻魔は『ボーイズ・ラブ』そのものを揶揄ったワケではない。そんなことをするのがナンセンスなのは、彼女も分かっている。
―――あくまで『敬虔で物静かなクール女どぅえす! みたいな仮面を被って、裏ではエロ本読んでぐへぐへ言ってたエロ女の変態ジャーニ』という十王筆頭をゲラゲラ笑っただけなのである。
未だ地面で土下座みたいな体制のまま、頭を抱えて『うわあああああああああああ』と叫んでいるジャーニ。
自身の嗜好を暴かれた十王筆頭の姿は、非常に情けないものだった。それを見た閻魔は、柄にもなく何だか申し訳なくなってきたので一応謝っておく。
「あ、あのさ―――ジャーニ? その……えっと、その、ドンマイ」
「ほざけ!」
「お、おい閻魔に向かって何だその言葉遣いは!」
「部下のプライベートも守れない閻魔などクソだ!」
「いやアレは、仕事熱心で部屋の掃除をする暇もないらしいお前の個室を、こっそり綺麗にしてやろうと……」
「男子高校生の母親か! そんなことせんでいいわクソ閻魔!」
「はぁん!? お前……閻魔にも堪忍袋の尾ってモンがあんだぞ!」
「それがどうした! じゃあ見せてくださいよ、その堪忍袋の尾ってのが切れた結末をよぉ!」
それを聞いた閻魔は、挑発にすとんと乗った。そして、ありったけの貶しをぶつける。
「ホラ『君だけの―――王子様だよ』とか言ってみろよ!」
「ぎゃあああああああああああああ! それは統合版八巻 362ページにあった雫くんのセリフっ……!」
「気持ち悪っ! なんで覚えてるんだよ!」
「雫くんを馬鹿にするな!!!!!!」
「いや馬鹿にされてるのお前だから! 雫くんのことは馬鹿にしてないから!」
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