第6話 猫は飼い主に似て三つ子が好き
ソファーに横並びで座る三つ子の前で俺が悩んでいると。
「ニャー」
「にゃー」
二匹の猫が、寝室の方からやってきた。
一匹の名前はショコラ。
実家から連れてきた三歳の猫で、ブラウンのさらさらした毛並みをしている。
もう一匹の名前はチーズ。
半年近く前、道端に捨てられていた子猫をサラと拾ってきて、この家で飼っている。
もふもふした白っぽい毛が特徴だ。
初めは折り合いが悪かった二匹だが、今では兄弟のように仲が良い。
「あ、ショコラとチーズだ。今日もかわいいねー」
二匹をよく知っている様子の
「この子たちが噂の猫ちゃんですか……!」
「実物は初めて見たけど、かわいすぎ……!」
サラは俺と一緒にチーズを拾ってこの家に連れてきた後。
度々この家を訪れて猫たちをかわいがりに来ていたのだが。
あのサラは、次女の
「ニャー」
「にゃー」
二匹は飼い主である俺の膝の上に、我先にと乗っかってきた。
二匹とも、甘えたがりで人なつっこい。
「ショコラ、チーズ、わたしの方にもおいでー」
彩がソファーから降りると、猫なで声で二匹を呼んだ。
ショコラとチーズは、呼ばれるがまま彩の方に行ってしまう。
「おー、よしよし」
彩は二匹をこれでもかというくらい、撫で回す。
「あやちゃんずるいです」
「私もかわいがりたい!」
咲と蘭も、猫たちの方に近寄った。
三つの同じ顔を見上げる形になる、ショコラとチーズ。
「ニャー……」
「にゃー?」
一匹は困惑し、もう一匹は不思議そうだった。
三つ子の区別が付いていないのかもしれない。
鳴き声を漏らしながら、三つ子の周りをうろうろしている。
「おお、私たちが誰なのか分かっていません。よしよし」
「見た目だけじゃなくて、匂いも区別つかないのかもねー。わたしたち、同じ洗剤を使ってるから」
「か、かわいいー……こしょこしょしてあげるね」
ショコラとチーズは、三つ子に撫でられたりくすぐられたりした結果。
程なくして、二匹とも三つ子全員に気を許すようになった。
ごろんと仰向けになったり、頭をこすりつけたりしている。
俺が、その光景を微笑ましげに見守っていると。
「もー……ショコラはホント、わたしの胸によじ登るのが好きだなあ」
「わっ、チーズくん!? 私の指ぺろぺろしすぎー」
猫たちのスキンシップが、エスカレートしていた。
「この愛情表現の仕方……猫は飼い主に似るんですね」
咲が俺と猫を見比べつつ、しみじみと言う。
「え。俺ってこんな感じだっけ?」
俺はそうやって、疑念を呈してみたが。
「まあ……似たようなものかな、と思います」
「ショコラなんて特に、みきとの真似をしてるようにしか見えないかも」
「チーズくんのぺろぺろも……なんだか既視感があるような、ないような」
三つ子たちは全然否定してくれなかった。
「……」
改めて言われてみれば。
ここ数週間、俺はサラにスキンシップをする機会が増えていたかもしれない。
だって仕方ないだろう。
俺の彼女、かわいすぎるし。
しれっと抱きついたり撫でたりしても、まんざらでもなさそうに受け入れてくれるし。
それどころか、自分から胸を触らせてくれたりするし。
「……この件は一旦これくらいにして、話を戻そうか」
「ふふ。そうですね」
咲は猫をなで続けながら、うなずく。
「わたしたち三人と付き合うか、一旦一人ずつつまみ食いするかの話だよね」
彩は独自の解釈をしていた。
「大体その話だけど、ちょっと違うね」
「あれ? そうだっけ」
彩はわざとらしく首を傾げた。
絶対分かって言っているよな。
あざとい。
「それで、みきとくんはどうしたいか決まった?」
蘭に改めてそう、問われるが。
「決まってないから、少し考える時間がほしい……っていうのはダメかな」
三つ子の全員と付き合うか、誰か一人を選ぶか。
そんな決断を今この場で下すなんて無理だ。
「まあ、みきと先輩も急に決めるのは難しいでしょうからね」
「うんうん。一日くらい、考えてみてよ」
「そうだねー。また明日、どうしたいか聞かせて?」
三つ子はひとまず、納得してくれたようだ。
期限を一日で指定してくるのは、ちゃっかりしてるな……と思うけど。
○
翌朝。
学校の教室にて。
「おい
クラスで数少ない友人と呼べる存在、
俺は複数人でインディーズのゲームを制作している。
一徹はそのゲーム制作仲間でもある。
「そっちは順調だ」
ちなみに俺の担当はプログラミングとシナリオだ。
元々はプログラミングの勉強ついでに関わっていて、シナリオは担当外だったのに、気づいたらやらされていた。
「そっちは……ってことは別の何かに問題があったのか?」
「あー、まあそんなところだ」
一徹は、俺にかわいい彼女がいること自体は知っている。
名前を教えたり、写真を見せたりはしていないけど。
「……冬休みに彼女とどこまでやったんだ?」
一徹は下世話な勘ぐりをしてきた。
が。
「お前に言うつもりはない」
「散々自慢してくるくせにケチ臭いな」
一徹は、大げさにため息をついてから。
ハッとした顔をした。
「待て。言うつもりはない……ってことは、何かはあったんだな」
「ノーコメント」
「ま、まさかお前……この冬に、大人の階段を登ったのか……!? 童貞仲間だと思ってたのに!」
「うるさいな。教室でそんな話を大声でするな」
「あいつ、冬休みに童貞卒業したんだ」みたいな目で見られたらどうするんだ。
まあ、事実なんだけど。
「問題は、そこじゃないんだよな……」
「じゃあなんだ? 一回シてみたものの上手くいかずに、関係が悪化したとか?」
一徹は、本当にそうだったらどうするんだよ、とツッコみたくなるような問いを投げかけてきた。
「むしろ関係が良くなりすぎたというべきか……増えたと言うべきか」
「増えたってなんだよ。彼女が分身でもしたのか?」
「大体合ってる」
「は? 童貞をおちょくるのも大概にしろよ、非童貞」
「……嘘はついてないんだけどなあ」
俺は、自分が置かれている状況について、一徹に打ち明けるか考える。
童貞を卒業してから彼女が三つ子姉妹だと知ったけど、誰とヤったか分からない。
しかも三つ子全員俺のことが好きで。
全員俺の彼女だと主張している。
(……妄想だと思われそうだ)
俺は結局、一徹には話さなかった。
○
放課後。
一日猶予をもらって、俺は結論を出した。
俺は飼い猫同様に、三つ子にすっかり気を許している。
(いや、それどころじゃないか)
俺は彼女が……
その大好きな人が、
そもそも三つ子だなんて想像していなかった以上。
あの時、童貞を卒業した相手が三つ子のうちの誰だったかなんて、意識していない。
ただ、遠城寺サラとシたと思っていた。
三つ子だったと知らされた後で思い返しても、やはり分からない。
あの三人は、本当に同じ顔や髪色をしている。
だとしても。
初体験の相手が誰かすら分かっていないこの状況。
(クズを自認している俺にしてもクズ過ぎる……)
ならば、まずは一人ずつ向き合ってみるしかない。
俺は三つ子に連絡しようと思ってスマホを取り出し、ラインを開くが。
「そもそもこの連絡先、誰宛なんだ?」
一応、「遠城寺サラ」として登録されている。
咲なのか、彩なのか、蘭なのか。
分からないがとりあえず連絡すると、
「いつもの公園で集合! みんなで待ってるねー! 愛しの三つ子彼女より」
というメッセージとともに、毛繕いする猫のスタンプが送られてきた。
◇◇◇
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それとタイトルを
童貞を卒業してから彼女が三つ子姉妹だと知ったけど、誰とシたのか分からない。
↓
童貞卒業してから彼女が三つ子姉妹だと知ったけど、誰とヤったか分からない。
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