第4話 ジュリアン 完結

ピーッ!


部屋中に、甲高い笛の音が鳴り響く。


あわててあたりを見回すと、扉が開いて、警護の者たちが飛び込んできた。

そして、あっという間に、ジュリアンは取り押さえられた。


「一体、何をするのですか……!」


体を押さえられながら、目の前の大柄の男、警護長のブンに問う。


ブンは真面目な人柄で、ジュリアンの偽りの姿であるサクにも親切だった。


ブンは、悲しい目をして言った。


「サクよ……。鳥様に危害を与えた件で、おまえを取り調べる」


「……取り調べ? 私は何もしておりません!」


あわてて、鳥のほうを見ると、倒れていた鳥はすでに金色の小枝にとまり、顔をそむけている。


「ほら、俺は何もしてない! 鳥様もお元気ではないですかっ!?」


「サクよ。それで、よく、鳥様の食事係になれたものだな……」


「は……?」


ブンはあわれんだ目を、ジュリアンに向けてきた。


「さきほど、鳥様が倒れられただろう? おまえの気が移ったのだ。鳥様への良からぬ気がな」


「良からぬ気など、滅相もありません……」


頭で考えただけのことが、鳥に伝わるはずはない!


「鳥様のお食事である雲は、青い実を割った瞬間から、どんどんまわりの気をすいとっていく。だから、鳥様が食べられる寸前に割るのだ。あのように、鳥様が倒れられたのは、雲がすいとった邪の気にあたったためだ」


「邪の気……?」


「おまえが何を考えていたのかは、これから取り調べる。この国で、鳥様の気を乱すのは許されないことだ。サク、残念だが、ついてこい」


ここで、捕まったら、今までの苦労が水のあわだ。

どうするか……。


その時だ。


キーン


聞きなれない音が部屋を満たした。


「なんだ? なんの音だ!?」


ブンが叫んだ。警護の者たちもざわめいている。


というのも、だれもが動けなくなったからだ。

ジュリアンを取り押さえている警護の者たちも、そのままの姿で固まった。


ただ、声はでるので、騒ぎを聞きつけた者たちが、次々と、飛び込んできた。

そして、皆、動けなくなっていく。


その中には掃除係のヨリもいた。

とりおさえられている食事係の青年を驚いた顔で見た。

そして、みんなが口々に言う言葉をかき集め、状況を察した瞬間、固まったまま、大きな金色の目から涙を流しはじめた。


ついに、国王ゲイルもやってきた。


が、部屋に足をふみいれた瞬間、ゲイルも動けなくなった。

視線と声以外はぴくりとも動かない。


そんななか、体を押さえていた警護の者たちをはねのけて、一人だけふらりと立ちあがったのは、食事係の青年だ。


瞬間、国王ゲイルに怖気がはしった。


(ことが起こる。今までになかったことが……)


食事係の青年の目がやけに光っている。


(あの青い目は、鳥と同じではないか……)


そう思った時、青年を見た鳥の目がくわっと見開かれた。


次の瞬間、鳥の全身の毛が、赤から金色にかわった。

青年の髪の色も、茶色から金色にかわった。


鳥は、青年の肩に優雅に舞い降りた。

金色の羽を頭の上まで広げ、口を開いた。


「コレ ワガ アルジ」


つきぬけるような鳥の声が、あたりに響き渡った。


鳥の声を聞き、魂がぬけたように、崩れ落ちた国王ゲイル。

そんな無抵抗の人間を、ジュリアンはどうしても殺すことはできなかった。

そして、血を一滴も流さず、ジュリアンが王となった。



その後、ジュリアンは大陸中をとびまわった。

戦いにつかれていた国々と話し合い、一国ずつ同盟を結んでいく。


輝くような金色の髪のジュリアンが肩に金色の鳥をのせ、金色の瞳をしたヨリ王妃をともなって動き回る姿は、光がさしてきたようだと民衆の間でひろまっていった。


そして、ついに、すべての国が手を結んだ。


ジュリアンは戦いを終わらせた光の王として、語り継がれていくこととなる。



(了)





※ 読んでくださって、ありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

水無月 あん @minazuki8

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画