第4話 パーティー結成
「あれ? ルカさん、結局買わなかったんですか?」
翌日、セレンに引き出したお金を戻そうとすると、首をかしげられた。
「……買わなかったって何をだ?」
「え? てっきり皆さんと同じように、装備を新調するのかと」
「……皆さん?」
言われて周囲を見渡すと、確かに装備が新しくなった冒険者がちらほらいる。
胸当て、籠手、革靴、ベルト……どれも以前より良い品に変わっているように思えた。
――急に何が起きた?
「まあ、一応預かっておきますね。今日中なら直ぐにお渡しできるようにしておきますね」
セレンの意味深な笑顔に見送られながらギルドを後にする。
のんびりと表通りを歩く。よく観察すると普段よりも露店の数が多く、鍛冶屋からは軽快に槌音が絶えず響いてくる。
見慣れた筈の町はいつにも増して活気に満ちているように感じた。
セレンに言われたからじゃないが、特に用事はないが馴染みの武具店へ足を運ぶと、店主はいつもの数倍テンションが高かった。
「よお、ルカじゃねーか! お前もなんか買っていくか?」
棚には見慣れない素材の鎧、軽そうな皮防具、見るからに値段が張りそうな武器が並ぶ。
数日前まで“安いが特長のない装備”が多くを占めていた店とは思えない。
「どうしたんだこれ……?」
「なんだよ知らねぇのか? ギルドから良い素材が安く大量に卸されてくるようになったんだよ!おかげで、どこの店も大助かりだ!」
店主は嬉しそうに笑い、近くの高そうな鎧をひと撫でする。
「マジでここんとこ景気がいいんだわ。いつまで続くかわかんねぇけどな!」
何が起こっているのかはわからないが、少なくともこの店も何らかの影響は受けているらしい。
それから一通り店内を見る事にした。
「じゃあまた後できてくれ!」
背中に受けた言葉に手で返事をし店を出る。
少し浮かれた雰囲気の表通りを歩いていると、前方から見知ったガタイの良い奴が笑顔で手を振ってきた。
「おーい!見ろよルカ! この黒狼の革の胸当て! 軽いし動きやすいし、かっこいいだろ!」
「いや、どうしたんだよそれ……」
「素材が大量に出回ると安くなるんだってよ! 今買わねぇと損だろ!?」
「草集めしかしてねぇのに?」
「……いいんだよ! かっこよければ!!」
ザックは誇らしげに胸を張る。
――こいつ借金あるのに大丈夫だろうかと思ったが言わないでおいた。
ザックと別れ、いったんギルドへ戻る。
「あれ? また来たんですか、ルカさん」
「……悪い、少し金を引き出してくれ」
セレンは苦笑いしながらもまるでわかっていたというように手早く対応してくれた。ポケットに小袋を捩じ込んで振り向くと見た事がある二人とすれ違う。
――新人と奴隷商でみた亜人の少女。
「ハヤトさん、昨日の魔物の分、もう解体終わってますよ。今度からは直接解体場にお願いしますね」
「すみません……わかりました。今度からそうします」
「それで今日はどうしました?」
新人……ハヤトは後ろの亜人の少女に目線を向ける。
「実は、冒険者登録をして欲しい人がいまして、あとパーティ登録をお願いします」
随分と小綺麗になった亜人の少女が控えめにうなづく。
「なるほどわかりました。それでは……」
そんな会話を背中で聞き流しながら、ギルドの扉を押し開ける。
「よう!帰って来たか」
先程の馴染みの店で金額を支払う。決して衝動買いではない。一応しっかりと見極めて購入したのだから。
店からでて、新調した靴で地面を踏み締める。
黒狼の革で出来たブーツ。普通の人では聞こえないくらい音がしないらしい。
冒険者にとって一番大切なのは、結局のところ靴だ。軽いし、動きやすい。それにかっこいい。
(……草集めしかやらないけどな)
そう思って苦笑いしながら帰宅する。
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