第2話 チートスキルで魔物乱獲

 「……今日もダメかよ」


 依頼表争奪戦。

 またしても俺は敗北して、テーブルに突っ伏していた。

 周りを見回すと、いつもの“負け組”の顔ぶれが揃っている。

 

 だが――今日は少し雰囲気が違った。


 普段なら受付に一直線の中堅パーティ連中の顔がチラホラある。今日はやけに負け組が多いようだ。


「……おいルカ、なんか変じゃねぇか?」

「俺に聞くなよ」


 いつの間にか横に来ていたザックも違和感に気づいているようだ。なんとなく受付カウンターの様子を伺うと、依頼完了済みの依頼書が高く積み上がっているのが見えた。


 誰かが一気に消化してるのだろうか。だがあの量は簡単にこなせるとは思えない。


 ふと依頼ボードの辺りが騒がしい事に気づき、視線を向ける。


「ちょっとー依頼少なすぎじゃない?」

 

「今日はもう帰ろーよ?あたし服見たいんだけどー」


 ギルド内でもよく目立つうるさい女二人がいた。周りには同じパーティの仲間たちも困った顔をしている。どうやら今日は休みにする事にしたらしい。


「リーダー! あたしたち先いくねー?」

 

「わかったわかった。夕方には宿に合流しろよ」


「はいはーい」


 うるさい二人は揃って買い物らしい。一人がこちらに気づいて両手を振る。

 

「あ、ルカだー! おっすー!」


こいつらの名前……知らないんだよな。と思いながらも適当に返事を返す。


「もー!反応うっすーい!!」


「そんなんじゃモテないよー?」


「別にモテなくていいんだよ」


「そんな強がっちゃてー!」


「私たちがデートしてあげよっか?」


「うっそー!冗談だよー?本気にした?」


「じゃああたし達いくね?ばいばーい」

 

 そんな事を言いながらギルドを出て行く。


「……たく。あいつら相変わらずうるせーな」

 

 横にいるザックに話しかけると、じっと二人の背中を見つめていた。


「なんで……近くにいた俺には話しかけてくれねぇんだ……?」


何かうわごとを呟いていて少し怖い。大きくため息をついたかと思うと俺の方に顔を向ける。


「ルカァ……一緒に草取り行こうぜ……」

 

「お前、また草取り?」

 

「また借金増えちまってよ……早く返せってあの受付の悪魔が……」


受付カウンターに顔を向けると、セレンがこちらににっこりと微笑んで手を振っている。


 ザックが小刻みに震える。


「……よかったな。セレンは手を振ってくれてるぞ」

 

 泣きそうなザックが草取りの依頼書を握りしめる。

(まあ……今日は付き合ってやるか)


「しょうがねーな。行くか」

 

「は、早くいこーぜ」


 ギルドから出ようと立ち上がった時、

 扉が開いて“あの新人”が姿を見せた。


 落ち着いた表情。

 静かで鋭い目つき。

 場の空気をわずかに変える気配。


 受付嬢セレンは彼に気づくと、ごく自然に微笑み、手招きする。


「ハヤトさん。ギルドマスターがお呼びです」

 

「わかりました。今行きます。あ、また素材がたくさんあるのでお願いします」


「……わかりました。解体所に伝えておきますね」


 なぜかセレンは苦笑いで答えると新人と一緒にギルドマスターの部屋へと消えていく。


  その背中が見えなくなった瞬間、ギルド内の空気がわずかに緩んだ。


(……なんか、妙だよな)


 あの新人が来るだけで、場の空気がほんの少しだけ張り詰める。

 まるで“格が違う奴がいる”と、身体が勝手に察してしまうような……そんな嫌な感覚。


(……何者なんだ、あいつ)


 胸の奥に、じわりとざわつくものを感じた時――


「ルカァ! はやく行こうぜ!」


 ザックが草取り依頼書を掲げ、涙目で叫んだ。


「……はいはい、わかったよ」


 その声に引き戻されるように、俺はいつもの日常に足を戻した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る