第7話 選ばれた者の手に

(この八つの石の中で、

 最も多くの魔粒子を宿した石――

 それが、成功した魔石というわけだ)

エリックは、水瓶を見下ろしながら思考を巡らせた。


ー 赤は、これまでの石の中で最も魔粒子が多い。 

来年こそは、完璧な魔石を作りたい。 ー

(……赤は、最良ではあった。だが、“完璧”には届かなかった)

赤は違う。


ー 白、緑、紫は、

  これまでより多くの魔粒子を含む魔石にしたかった。

  しかし、白だけは叶わなかった。 ー

(つまり――赤を超えることを狙った石が三つあった)

(白は失敗。だが、緑と紫は……成功に近づいた)

 緑と紫は、赤より上。

 白は、赤より下。


ー 赤と緑の間には、一つの石。 ー

(順位を並べれば、こうだ)

 

一位――緑

二位――紫

三位――赤

(赤と緑の間には、 確かに、紫が一つ)

(白は……それ以下だ)

 思考は、迷いなく一つに収束した。

(成功した魔石は――緑)


「……緑の石を、頂こう」

静かな声だった。

 

だが、その言葉は、

部屋の空気を、わずかに変えた。

「分かったわ……緑ね」


ミレイアは、水瓶に手を入れ、緑色の石を取り上げた。

淡く光を帯びたその石は、静かに、しかし確かな存在感を放っている。


「でも……」

ミレイアは、石を渡さず、そう続けた。

「その前に、

 あなたに来てほしい場所があるの」


「ほう……」

 エリックは、わずかに口元を歪めた。

「どこへなりと、お供いたしましょう」


「そこでの用事が終わったら、この魔石を渡すわ」

 

ミレイアは、両手を広げ、掌を天へ向けた。


次の瞬間――

彼女の指先から、金色の霧が溢れ出す。

霧は床を這い、

壁を越え、

やがて、エリックとルーメンを包み込んだ。


「――っ!」

視界が、歪む。

「魔術……か?」

問いかけは、霧の中に溶けていった。

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