第6話

「ミスター・ガブリエル・モーガン。素晴らしいスピーチでした」


ゲーゲルのニューヨーク新拠点。

セント・ジェイムズ・ターミナルオフィスのスタジオから出てきたガブリエルに、秘書のケイトがにこやかに声をかけた。


「ゲイブでいいよ。今さら改まるなよ。ケイト」


「わかったわ。それじゃあ、ゲイブ。本当に素敵なスピーチだったわ。最高よ」


「ありがとう。少し短すぎたかな」


「ちょうど良かったと思うわ。クリスマスイブですもの。みんな一刻も早くディナーを楽しみたいわよ」


「それならいい。クリスマスにあえて発表する。一瞬でも人々の目に留まればそれでいいんだ。」

「それだけで『Ω(オメガ)』はこの世界に存在することになる」


「ライブ配信じゃなく、それこそAIの生成動画でもよかったんじゃない?」


「よくできた嘘じゃダメなんだ。これはリアルだ」

「今日が第一歩だ。これは嘘じゃない」


「エネルギー問題は解決しそうなんですか」

ケイトがふと思いついたように尋ねた。


「それにはまだ時間がかかる。しかし、もう計画は整った」

「とにかく『モデル崩壊(Model Collapse)』が深刻になる前にすべてを終わらせなければならない」

「5年以内だ」


「…本当に、大丈夫なんですね」


「大丈夫じゃなきゃダメなんだ」

「世界はすでにAI依存に加速度的に向かっている。もう後戻りはできない。この計画が成功しなければ世界中のインフラが破綻するだろう」

「発展と崩壊が同時進行で進んでいるのが今のAI技術だ。このままで良いわけがない。終末はもうすぐそこだ。我々がただ手をこまねいていれば、だ」


ガブリエルは厳しい表情で自分に言い聞かせるようにつぶやく。

しばらくして目を上げると、気を取り直したように明るくケイトに言った。


「休暇が終わったらすぐ韓国と日本に飛ぶよ。ジェットを手配しておいてくれ」


「もう手配済みよ。ゲイブ」


「いつも助かるよ。ありがとう」


「どういたしまして。それでは良い休暇を」


「メリークリスマス。ケイト。今日はありがとう。君も良い休暇を」


「メリークリスマス。ゲイブ」

「奥様とかわいい双子ちゃんによろしく。楽しく過ごしてね」


ケイトがオフィスを去ると、ガブリエルは独り、壁に掲げられた『Lull-Ω』のロゴを見つめた。


「ジョシュア。アキヒコ。あなたたちは投げ出した」

「だけど、私はあきらめない。闘うよ」

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