第九夜 一人の夜
日が沈み、空には星が浮かび始めていた。
私は当たり前だったかつての日常と、
急に投げ出された無の世界を見比べていた。
食べるものも、寝る場所も、握る手もない。
追うべき背中が、私にはなかった。
見渡す限りの自然。
森は日が差していた頃とは打って変わり、
風に揺られ不気味な闇を孕み始めていた。
森からは奥行きが消え、
木々の間にはただ闇があった。
ふと同じ木の並びの中に、一つだけ、
根元に大きなうろのできたものを見つけた。
人一人なら問題なく入れそうだった。
私は内外に何もいないことを確認し、
うろの中に入り手頃な草木で蓋をした。
昨日までの柔らかい寝床とは違う、
硬く、冷たく、汚い地面に寝そべった。
見上げると、蓋の隙間から木の葉を抜けて、
かすかに星の光が見えた。
かつて父の手を握りながら、
見上げた夜空を思い出した。
暖かい手も、満足のいく食事も、
抱きしめてくれた父もいなかった。
いなくなってしまった。
寒さに小さく震える両手を見た。
私にはもう、何もない。
誰かに育てられ、
誰かに奪われた。
——名前すら、そうだった。
私の人生は始まった時から、
私のものではなかった。
父は自由にさせてくれたが、
この芦毛がそれを許さなかった。
父だけが、この髪を否定しなかった。
いや、本当はあの場で一緒に生きた誰もが、
受け入れてくれていたのかもしれない。
もう少しで切ろうと思っていた
白く輝く髪を撫でた。
父はよく、母の話をした。
「母さんも、お前によく似た綺麗な髪の毛だった。」
もし他の人と同じ黒髪だったら。
あの場で名指しされることはなかったのだろうか。
こんなに目立っていなければ、
父は殺されずに済んだのだろうか。
気づけば頬に冷たさが走った。
涙が静かに地面に落ちた。
明日からは、誰にも頼らず、
自分一人で生きていかなければならない。
私は小さく震えながら、目を閉じた。
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