第三夜 その芦毛を想う者

「奴隷如きにやる服などないわ。」

父は管理人に服をもらいに行ってくれた。どうなるかはわかっていた。

「そこをなんとか頼みますよ。大きめの布でもいいので。」

父は裁縫も得意だった。

父はお前の母さんに教わっただけだ、と言っていたが、

きっと何度も練習したのだろう。

私が着ているこの服も、いつも同じ小屋で眠る人たちも、父が縫い直したものだ。

「だから渡せないと言っただろう。あの娘に着させるのか。ほうーー大きくなったもんだな。」

そういうと彼は私の体をつま先から頭まで舐めるように見た。

「おい、俺の娘をそんな目で見るな。」

父の形相が変わった。いつもは優しい目つきの父だが、

周りの人たちと比べても体格は大きかった。

彼らも少し後退りをした。感じたのだろう。

いつもは仏のような父の、周りの空気の重さを。

彼は少したじろぐと鞭を取り出し、父へ向けて振り上げた。

乾いた音が響いた。父の体に赤い線が入った。

「俺に逆らうな。お前も、お前の娘も、お前たちも。

誰が面倒見てやってると思ってんだ。」

彼の言うことは正しかった。戦に負けた国民は見せしめに殺される。

でも私たちは奴隷として生かされた。

後から知ったが、私たちの国の上流貴族が説得してくれたらしい。

きっとこの人もその貴族の一人なのだろう。

他の国だと奴隷の扱いはもっと酷いものらしい。

皆が恩を感じていることもまた事実であった。

「わかっている、私たちはあなたに恩がある。

他には何も求めない。ただ着る物だけをくれないか。他の者の分は、私が直せる。」

彼は何度も鞭をしならせた。

私は見ていることしかできなかった。周りの人たちも。

父だけがただ、雨のような痛みに耐えていた。

ふと二人の背後の輝きが消えた。

鞭を振る中彼は何度も振り返っていた。

私が輝きが消えたと同時に、鞭を持つ手は降ろされた。

「もう一度頼む。着る物をくれないか。」

父は血の滴る体を力強く立たせて男を見た。

男は観念したようだった。下を向き何かを悔いているようだった。

男は私が見つけた輝きの方をもう一度確認すると、遠くの木箱の山を指差した。

「あの木箱にかけられている布を持っていくといい。着いてこい。」

そう言い男は父と私を見ずに、俯いたまま歩き出した。


ーーーーーーーーーーー

あとがき

管理人であっても人である。ただ悪いままの悪役などいない。

そんなことを私の作品では大事にしています。反響次第では小さな登場人物でさえ短編エピソードを書けるほどのバックストーリーを用意しています。

もし「このキャラ書いて欲しい!」とコメントいただければ、

いつかの機会にまた掘り下げようと思います。


これからもどんどん上げていくので、もしよろしければ、

フォローといいね、称賛していただけると励みになります。

これからもよろしくお願いいたします。

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