第二夜 冷たい水、暖かい手

ぬるい風が肌を指し、私は目を覚ました。

起き上がると、父はすでにいなかった。周りの人はまだうずくまり寝ている。

その中に見覚えのある細身の男がいた。

腕から背中にかけて皮膚が酷く傷ついていた。

私は近場の藁をかけてやった。あまり量はなかったが。

男の震えが小さくなったようにも見えた。

お礼を言われたわけではない、でもなぜか私は喜んでいた。

いつも自分のことだけを考えるように父に教わったから、

どこか不思議な高揚感を感じていた。

その感覚は、父が褒めてくれる時と同じものだった。

少し眩しい日差しの中外へ出ると、そばの木陰から水の跳ねるような音がした。

見ると父が大きな桶に膝がつからない程度の水を張り、体を流していた。

「早いじゃないか、もう起きたのかーー。

そうだ、お前の体も流してやろう。すこし冷たいが大丈夫か。」

寒いのは嫌いだった。いや、本当は恥ずかしかっただけなのかもしれない。

でも私は土と汗の粘り気のある自分の体を見て、

仕方なく桶に足を踏み入れた。

体が震えて顎が鳴った。この後冷水を浴びるなんて考えられなかった。

でも父は優しく肌を流してくれた。跳ね上がるような冷たさは感じなかった。

木々の間から照らす陽の光と風、父の暖かい手に私は心地よさを感じていた。

この芦毛は水に濡れると、色の抜けた獣の毛のように見えた。

父さんは私の芦毛の話を一切しなかった。

ただいつも、綺麗だという旨の言葉をくれた。

「大きくなったなあ。そうだ、今度父さんがもう少し大きな服をもらってきてやろう。

この小さな服じゃ、お前も恥ずかしいだろう。」

父はそういうと立ち上がり、体を拭いてくれた。

記憶に残る父は筋肉質であった。

少なくとも、今は見違えたかのように細くなってしまっている。

今日こそはパンを貰わない。そう私は心に決めた。


ーーーーーーーーーー

あとがき

お気づきの方もいるかもしれませんが、本作の少女は一言もしゃべりません。

あえて年齢もわからなくさせています。その理由が語られることはありませんが、後半に行くにつれ解釈のヒントとなるものが続々と出るので、

よければ最後まで読み切っていただければと思います。


これからもどんどん上げていくので、もしよろしければ、

フォローといいね、称賛していただけると励みになります。

これからもよろしくお願いいたします。

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