蛍光灯

ゆっくりとくっついた箇所が離れる。

 目を開けると有沢と目が合う。

 手を伸ばして頬を撫でると有沢はもう一度目を閉じて顔を寄せてくるので私も目を閉じて応じる。

 自分のものではない柔らかい感触が押し付けられる。

 有沢としている。

 高校生の頃は友人で、再会してからは隣人の有沢と。

 してる。

 私に押し付けられた唇は、何度も感触を確かめるように軽く離れて、またくっついてを繰り返す。

 大丈夫、ここにいるよと伝えたくて私からも押し返すと唇と前歯の隙間を縫ってぬるりと生暖かいものが入り込んでくる。

 侵入したはいいものの、恐る恐るこちらを伺うようにしている有沢に自分を絡める。

 同じ柔らかさが擦れ合ってすべるように触れ合って気持ちがいい。

 脳天から出血しているのではないかと錯覚するほどに身体が熱く、鼓動を打つのを感じる。

 そして、掴んだ両肩から有沢もきっとそうだと伝わる。

 このまま壊れてしまいたい。

 どうにかなってしまいたい。

 瞑った目の奥がチカチカと光り、私を繋ぎ止めている紐が容赦なく解かれる。

 元々一つの果実が実を割るように有沢が私から離れる。

 瞼をゆっくり開くと蛍光灯の光を背負って逆光で影になった有沢の顔がぼんやりと見える。

 ふわふわとしていた感覚が輪郭を取り戻し、夢ではなく現実にいるのだと教えてくれる。

 有沢の目が一瞬下に泳いで、すぐに私をまっすぐ捉えた。

「広井」

「今日はだめ」

「まだ何も言ってない」

「今、生理」

 有沢は一瞬固まり、大きなため息と共に私の胸によりかかってくる。

「ごめんて」

 背中に手を回して撫でると「別にいいですよー」と低い声が返ってくる。

「拗ねるじゃん」

「拗ねてない。終わったら……」

「うん」

 有沢の手を取り、指を絡ませる。

 脱力した有沢を胸に乗せたまま目を閉じる。

 持て余した有沢が持ち直したらもう少し一緒に酒を飲もう。

 それからいつものように同じ布団で朝まで眠ろう。

 それまでもうしばらく、こうしていたい。

 

 

 

 

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