公園
薄いカーテンを貫通して差す光が夢の世界から私を引き戻す。
ぼんやり開けた目の前には広井の後頭部があった。
まわしたままになっていた腕を引き寄せて、広井の肩あたりに顔を埋めるとシャンプーと酒の匂いがした。
すぐにもぞもぞと動き出した広井が身体をこちらに向けて、目が合う。
「おはよ」
「おはよう」
広井はそのままゆったりと起き上がって伸びを始めた。
私も一緒に起き上がって身体を捻る。
シングルの布団に二人で寝るとそれなりに身体が固まっている。
「有沢、今日バイト?」
「午後からね」
「ふむ」と唸って広井は枕元の年季の入った目覚まし時計に目をやった。今は9時前だ。
「ちょっと公園行こうよ」
「お前公園好きな」
特にすることもないので一緒に行くことにする。
「支度してくるから終わったら集合な」
一旦自室に戻って顔を洗って歯を磨く。
隣とはいえ、いちいち帰ってくるよりも広井の家に私の歯ブラシを置いておいた方が楽かもしれない。
顔を洗って適当に髪も整えて自室の玄関を開けると、共用廊下で広井がしゃがみ込んでいた。
「お待たせ」
「行きましょか」
連れ立ってアパート前の道を一本曲がってすぐにある公園に入る。
平日の午前だからか人はいないようだ。
広井は早速雲梯に向かって駆けていく。
ぶら下がって渡るのかなと思ったらそういうわけではなく、地面に足で絵を描き始めた。
「何描いてんの」
近寄って見てみるとそこに描かれていたのは無数の……。
「うんこ。渡れなかったらうんこの海に落ちる」
説明しながら広井はソレを地面に更に増やしていく。
せめてものお助け要素として、広井が描いたうんこの二つにコーンを生やしてソフトクリームゾーンを作っておいた。
広井は八個目を描いたところで飽きたのか昨日も乗ったブランコに移動して座るもなかなか漕ぎ出さず、こっちをじっと見ているので後ろに回って押してやる。
広井の背中が離れて近づく。
その感覚が段々と広がり、やがて自分で勢いをつけるようになってきたので、押すのをやめて隣のブランコに腰を落ち着ける。
ぼーっと見ていると広井の乗ったブランコはどんどん勢いを増していく。
そのまま飛び出していってしまうんじゃないか。
そんな気がして広井の揺れにタイミングを合わせて私もブランコを漕ぎ出してみる。
視界でブランコに座った広井が固定されて、周りの景色の方が右に左に傾くような錯覚を覚えた。
不意に便所サンダルで勢いを殺して広井が静止する。
「今日さー、何時に終わんのバイト」
「10時」
「お迎えに行こうかな」
「こないだもそんなこと言って酔って寝てて来なかっただろ」
「今日は行くよ」
ヘラっと笑ってまた漕ぎ出す。
さて、今夜広井は私を迎えに来るだろうか。
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