お布団

目が覚めると広井の腕の中にいた。

 見上げると広井はまだ寝息を立てて穏やかに眠っているようだ。

 ……またやってしまった。

 私はどうやら酒が入ると広井に甘えてしまうらしい。

 記憶が飛ぶタイプではないので、眠るまで何があったか全て覚えている。

 覚えているからタチが悪い。

 広井と同じ布団で目が覚めるのはもう何度目かわからない。

 大体こいつもなんで全部受け入れるんだ。

 こいつが何でもかんでも許すから、最近はシラフのときでも無意識にくっつきに行ったりしてしまうことまである。

 いい大人が同級生の友達に甘えたりしてみっともない。

 何より恥ずかしい。

 次に広井と飲む時は毅然とした態度で静かに飲む私を見せつけよう。

 広井の腕から抜け出して、身体を起こす。

 足元に転がっていたスマホを点灯させて時計を見ると、二十三時を過ぎたところのようだ。

 六時間ほど眠っていたらしい。

 広井は変わらず寝息を立てて眠っている。

 根元がすっかり黒くなった金髪を指で梳いてみると、やはりケアしてないからか途中で引っかかった。

 起こさないように慎重に指を通す。

 さて、どうしようか。

 寝直すにしても自分の部屋に戻るか。

 この煎餅布団で二人で寝るより自分の布団で寝た方が広さの点では快適だろう。

 帰るか、と立ちあがろうとすると左腕が引っ張られる。

 見るといつの間にか目を開けた広井がこっちを見ていた。

「どこへいく」

「起こしてすまん。自分の部屋に帰るよ」

 再び身体を起こそうとするが、また左腕が引っ張られる。

「広井?」

「帰らなくていいじゃん」

 そのままグイッと腕を引っ張られ、私は強制的に再度身体を布団に横たえた。

「別にいいけど普通に狭いだろ」

「でもあったかいじゃん」

 言いながら広井がこちらに身体を寄せてくる。

 ……顔が近い。

 広井の顔がとてつもなく近い。

 一つの枕に二人の頭が乗りそうなほどに。

 視界は広井しか映さない。

 広井の目がまっすぐこちらを見つめて、こちらも目を離せなくなる。

「有沢」

「なに」

「……酒臭い」

「お前も臭い」

 瞬間、二人して吹き出してしまう。

 広井がケタケタと笑うのを見て私も声を出して笑ってしまう。

「はい」

 一通り笑ったあと広井は丸まるように背中をこちらに向けた。

「はいはい」

 その背中に覆い被さるようにして眠る。

 私が感じている温かさを広井も背中で感じているといい。

 熱はいつしか身体全体を包み込んでいて、今度は朝になるまで目は覚めなかった。

 

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