第2話 反逆の王妃、王宮へ
国王アルベルト二世の治世は、腐臭を放ち始めていた。
寵姫たちの争い、国民への重税、気に入らない役人や軍人へ粛清。
王は恐怖で国を縛ろうとし、信頼を完全に失っていた。
そこに、辺境から現れたのが“白百合の女王”だった。
リュシエンヌは自らを王と名乗らない。
だが彼女の前に集った者たちは、自然と膝をついた。
「私は救世主じゃないわ」
そう言いながら、彼女は正確に人心を掌握した。
不満を持つ領主、追放された騎士、粛清を恐れる官僚、世間に不満を持つ若い男女
剣と魔術、そして恐怖と希望を等分に与える。
反乱軍は急速に膨張した。
戦場において、リュシエンヌは冷酷だった。
降伏を拒む者は斬り捨て、裏切る者は見せしめに処した。命令に迷いはない。
その姿は、かつて「慈悲深き王妃」と呼ばれた女とは別人だった。
やがて王都への道が開かれる。
城門が魔法によって破られ、守備兵たちはすべて射殺された。炎が空を焦がした。
国王の取り巻きたちは次々と首を落とされ、惨殺され、逃げ惑い、命乞い・・・
だがリュシエンヌはいっさい聞く耳を持たなかった。
部下の騎士団に命じすべて殺し、みずからも取り巻きたちの胸に剣を突き立てた。
リュシエンヌは命じる。
「寵姫たちは、裁かれるべき罪人!」
火刑台が組まれ、かつて王に愛された令嬢たちは恐怖の中で叫んだ。
「お慈悲を!リュシエンヌさま!」
「お願いです!王妃さま!」
王妃は顔色一つ変えず、それを見届けた。
慈悲は、もう彼女の中にはなかった。
そして火刑台に火が放たれた・・・
激しい炎の中で絶叫し、身体をくねらせ、最後の最後まで命乞いをする女たちを
リュシエンヌは激しく憎悪した。
王宮の玉座の間は、静まり返っていた。
血と煤の匂いの中で、アルベルト二世は一人、立っていた。
扉が開く。
甲冑に身を包み、大剣を携えたリュシエンヌが歩み入る。
その姿は、即位式の日の花嫁とは似ても似つかない。
「・・・戻ったのか」
「・・・あなたが捨てた女として・・・」
国王は震えながら言葉を探す。
謝罪か、命乞いか、それとも愛の記憶か。
「すまない・・・俺が悪かった・・・許してくれ・・・」
だが王妃は「私はあなたに殺された。名誉も、未来も」
彼女は剣を構える。
かつて王に誓った手で、今は殺意を握っている。
「これは復讐じゃない」
一歩、距離を詰める。
「清算よ」
大剣は迷いなく突き出され、王の胸を貫いた。
ギャッ・・・
叫びは短く、玉座の間に虚しく響く。
アルベルト二世は崩れ落ち、王冠が床に転がる。
リュシエンヌはそれを踏みつぶした・・・
「私は王にならない」
彼女はそう言い、背を向ける。
王妃はすべてを奪われ、すべてを奪い返した。
残ったのは、血と灰と――自由だった。
白百合は、もう二度と純白では咲かない。
だがその根は、誰よりも強く、大地に食い込んでいた。
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