第2話 病気の貴族
「アーサー様ッ!大丈夫ですか?!誰かッお医者様を!」
朝から、メイドたちの慌てた声が聞こえる。
「ゲンドゥル!お前はアーサー様にお食事をお運びしなさい!」
現メイド長、アイリーンの金切り声が、ゲンドゥルの耳を貫く。
今朝、アーサーが倒れたのだ。しかし、以前から、肌荒れ、めまいで悩んでいたらしい。
おかげで、屋敷内は大混乱。洗濯係だったゲンドゥルも、人手が足りないからという理由で、調理場で働かされている。
ゲンドゥルは、相変わらず無表情で、アーサーの食事を運ぶ。
ふと、食事に目を落とす。ゲンドゥルは、ため息しか出なかった。
「この屋敷には、馬鹿しかいないのかな。」
そして、廊下を引き返していった。
「メイド長、少々よろしいでしょうか…」
「なんだい!あんた、まだ運んでいなかったのかい!まったく使えないね!はやくおし!」
アイリーンの顔が、鬼のように引きつる。
「しかし、なぜ肉だけなのです。症状からお見受けすると、アーサー様は野菜不足です。なのにこの食事には、肉とパンしかないではないですか。」
ゲンドゥルは、呆れたように告げた。
「何をいってるんだいあんた、頭おかしいんじゃあないか?!貴族が食べていいものは、高貴な食材だけだよ!食材はね、上から火、空気、水、土って決まっているんだ!四元素って知ってるかい?私たち人間が信仰している、キスター教では常識だよ!」
イカれている…とゲンドゥルは思った。顔をしかめているゲンドゥルを横目に、アイリーンは話を続ける。
「つまりね、野菜って言うのは、一番下のものなんだ。土だよ!アーサー様は、どこかで手違いがあって、野菜を食べてしまったから、あんなことになったんだ!」
ゲンドゥルは、話が通じる相手ではない、と悟った。どうせ助けるべき相手でもない…と、言われたまま食事を運ぼうとした。
その時、脳内を、ある翁の姿がよぎった。
「ゲンドゥル、確かに我々の王は、良くない。断言する。しかし、人間全員があんな奴ではないんだよ。」
なぜ今更綺麗事を…。でも、見極める価値はある。アーサー様と言う奴が、本当に忌むべき相手なのか。
わかったよ、教授……。
ゲンドゥルは、拳を強く握りしめて、アーサーの部屋に向かった。
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