4-2.平日の日差し
剛と彩ちゃんに、「新メニューはスパイスカレーがいいと思うよ、エスニックも食べたいな」、とLINEを打つ。彩ちゃんからすぐにかわいいキャラクターの「OK」のスタンプが返ってくる。
夕方、スーツ姿のはるちゃんが店の前を通る。大学四年生になったはるちゃんは、すでに内定が決まっていて、しかしバンドを続けるのが難しい勤務内容になりそうなので、悩んでいるようだ。その、すべてがこれからである健やかな美しさに思わず目を細める。
冷蔵庫からコーラを一本取って渡すと、「ありがと!また土曜日にね!」と、夕方の太陽に負けないまぶしさを放ち、脇目もふらずにまた歩いて行った。
「おや、しゃーさん」
首輪に雪の結晶をぶら下げた猫が足元にすり寄ってくる。おなかが空いたらしい。
しゃーさんは、春先からこの辺りに現れた元野良猫で、なんとなく放っておけなくて世話をしていたら、そのままうちの子になった。この、古くて広いだけの家は、彼女にとっては遊び場がたくさんあるようで、しかしいつも家のどこかに生き物の気配があるというのが、少しだけわたしを温めた。
似たような生態を持つ親近感からか、最近はユイちゃんがしゃーさんに会いにせっせと我が家にやってくるようになった。彼女の動きはゆっくりで丁寧なので、しゃーさんも一緒にいることに異論はないらしい。
昼食のために母屋に戻った際は一人と一匹仲良くソファで寝ていたので、そっとブランケットをかけてきた。
閉店時間になり、シャッターを下ろそうと外に出ると、見覚えのあるSUVが通る。無意識に目で運転席とナンバーを追い、そのあと小さく首を振ってまた作業に戻る。
「さて、剛はカレーを採用かな、それとも、ちょっと凝ったエスニックかしら。」
明日は燃えるゴミの日だから、明日こそは寝坊しないぞ、と自分に言い聞かせる。
夏の気配がすぐそこまで来ている。エスニックって、どんな種類があるんだっけ、検索しながら、家に戻った。
やじるし商店街の国境 @iroak
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