第三章
3-1.消えた地面
3月、修さんが消えた。
最初は、またあの時みたいに、明日の朝になれば来るでしょ、くらいに思っていた。
夜になれば来るでしょ、休みになれば来るでしょ。
「最近、旦那さん見ないわね」
以前、修さんが店番を手伝ってくれていた時に来てくれたのであろうお客さんの声で、はっと我に返る。
「なんか、忙しいみたいで」
大丈夫、今のは上手に返せた。
「3月だものね」
「そう、どうしてもね」
当たり障りないやり取りをし、お金を受け取り、商品とおつりを渡す。
見送りが終わると、慌てて事務所に下がる。一気に、不安、恐れ、胸の中にある様々な感情が水の形をして、目からあふれる。
いなくなって一日目、前にもあったじゃないの、と自分を宥めた。
三日目、剛と彩ちゃんの声を借りて「前もあったよな、だからまたふらっと来るんじゃないか」という言葉で自分をいなした。
五日目からは、「平日だから」、「出張なら、一週間は帰ってこられないこともざらだから」、「海外にも行くような人だったら、二週間とか一か月の不在もおかしくないじゃないの」と、節目ごとの理由を探し続けた。
頭がそうやって自分を落ち着かせようとするのと同時に、身体は一生懸命に、いなくなったあの日からの事故のニュースを探す。
大きな事故、ない。似た年齢の人が巻き込まれたオフィスビル火災のニュースがある。名前は出ていないが、無事。これが修さんなら、今来られなくてもおかしくない。
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