2-4.佐藤

「みーおちゃん!どう、今夜の飲み会、来る気になった?」

 

「佐藤さん。行かないって言ったと思うけど。」

 

「もう!悠人でいいって言ったじゃん!」

 

距離感ゼロで、店の中に飛び込んできたのは、近くにある大きな病院で看護師をしているらしい、佐藤さん。

 

「みおちゃんも、ここに来る前は病院で働いてたって聞いたよー?うちの病院、みんないいやつばっかりだし、絶対楽しいって!」

 

聞いたよって、誰に?聞き返そうとして、やめる。それは、誰かに攻撃と苛立ちの心を動かしてしまうことに他ならない。


「行かない」

 

わたしは今、真面目に仕事をしていて、目の前には顧客である修さんをお待たせしている。そんなことを意にも介さない様子で話し続ける佐藤さんに、ずいぶんイラっとし始めた。

 

「ユウト、ミオは今集中したいみたいだぞ」

 

修さんが、そっと口を開く。

 

「おさむさんー、俺、今、勝負の時なの!みおちゃん絶対こういうの、来てくれないんだもん」

 

「二人は知り合いなの?」

 

「そう」

 

「おさむさんとはね、冬まつりの実行委員仲間なの」

 

短く、イエス/ノーを示すだけの修さんと対照的に、うきうきした様子で佐藤さんが長々と答える。

 

「ほら、うちの病院の駐輪場、冬は雪で使えなくなるっしょ?みおちゃんがこっちいたときもやってたかわかんないけど、何年か前からあそこで冬、雪灯籠を作って、イベントやってんの。おさむさん、器用だし、頭いいし、それに、外から来たなら、やっぱゲンチコーリュー、あったほうがいいっしょ。ってまあ、俺はそう思うわけ!」

 

何でお前がそんな誇らしげなんだよ、と思いながら聞く。ああもう、ラッピングペーパーがズレたじゃないか。邪魔だなあ。


「出店とか、ゲストとか、いろいろ俺、案あるから!みおちゃん、一緒にいこ」

 

いやいや、お前運営側なら、客として参加する視点じゃダメだろうよ、心の中でツッコミを入れるが、口には出さない。この手のタイプは、応答したら最後、自分の欲しい回答にたどり着くまでしつこいのだ。


「出店もゲストもいいけど、病院としてやるのに、外の人も手伝うの?」

 

ふと気になったことを尋ねる。

 

「違う違う。町内会のやつ。宏さんとこの。」

 

ああそうだ、そういうの、あった。わたしが子どもの頃も、あの病院の駐輪場は季節ごとのイベントの会場になっていた。懐かしい。今じゃ衛生管理が問題になるからやらないけど、あそこで毎夏やっていた、流しそうめんが楽しみだった。

 

懐かしくて思わず笑顔になったのを、佐藤さんは自分の話への前向きな関心だととらえたようで、そこからも延々話し続ける。聞こえるノイズを、ラジオか何かだと思うことにすると、作業への集中も回復して、無事、修さんのギフトが完成する。

 

「修さん、できたよ。」

 

「えー、みおちゃん、俺のことは悠人って呼んでくれないのに、修さんは修さんっていうの?ずるくない?」

 

「人徳だな」

 

修さんは、大人の笑顔で品物を受け取った。

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