2-3.12月の温度
「修さんは、今年の自分へのクリスマスプレゼントは決めた?」
12月に入り、もはやパーカーを羽織るだけでは外に出るのが難しい季節になった。店のディスプレイは、しっかりクリスマスのものにしている。すぐに正月の飾りに切り替えるための準備が、最近の楽しみ。こういうものは、本番よりも前準備が好きなのだ、昔から。片付けは少し、苦手だけど。
修さんは少し考えて、「ないな、物欲がない」と笑う。
「あー、なさそう、似合う」わたしも笑う。2か月、この短い朝の挨拶を続けることがもはや日課となっていて、「修さん」と呼ぶことにもすっかり慣れた。
さらりと流して、話題を移す。
「修さん、これ見て。わたしが作ったグッズがね、採用されたの。イベントでさ、カップル限定でもらえるんだよ。」
「そかそか」
相変わらず、興味があるのかないのかはわからないけれど、拒みもしない相槌が返ってくる。近づきすぎもせず、遠くもないこの距離感はとても心地よかった。彼は、一定以上には踏み込ませないけれど、そこさえ守れば、敢えて遠ざけるようなこともしない。今のわたしにはとても安全で、ちょうどいい温度、ちょうどいい距離感に思えた。何より、毎日必ず決まった時間、決まった距離感でそこにあってくれる。
出身は北陸で、そこからは転勤を続けているらしい。何の仕事をしているか、どんな背景を持っているのか、それが特定されそうな固有名詞は、地名であっても一切出さない。
プロファイリングにも熱が入る。しかし、いつも彼のほうが一枚上手で、わたしもこの距離感を壊すような踏み込みはしない。
今日は珍しく、店にお酒を買いに来た修さんと、昼に顔を合わせている。12月の日曜日。お世話になっている方への贈り物らしいそれを、きれいにラッピングする。
どのお酒をどんなラッピングにするか、どんなPOPをつけるか、幼いころに母が一生懸命練習するのを眺めていた。今、その記憶をなぞりながら、慣れないながらも楽しくやれているように思う。送る相手を思って、何かを形にしていく作業は、わたしの性に合っていた。
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