1-6.受け止めてくれる場所
「美音、今日は早いやんか」
商店街の、2区画先にある肉屋は、わたしの小学校からの友人の実家であり、彼は今、昼は肉屋のまま、夜は居酒屋として店を開けている。
関西の大学に進んだ彼が、学生時代に賄い目当てで始めた居酒屋のアルバイトが、学業よりもよほど性に合ったようで、そのまま弟子入りして、料理の腕を磨いた。そこで出会った10歳年下のかわいい妻は、この店の看板娘であり、わたしのいい話し相手にもなっている。東北生まれ、東北育ちの彼の関西弁はいまだに笑ってしまう。
わたしは、誰かと話がしたいなと思うときにここに来る。彼らは、わたしがここに来る意味をよく知っていて、踏み込んだり、踏み込まなかったり、ちょうどよかった。
今朝の出来事を、まだ動揺が残ったまま話す。友人はまず、この古い店が軋むのではないかというくらいの大声で笑った。
「なんやそれ、めっちゃ守るやん。そんな、仕事くらい喋ればええのに、ようわからん」
慌てて彩ちゃん、店主の剛のかわいいかわいい天使であり妻が「でも、人に言えないお仕事もあるでしょ?」とたしなめる。
そこからは、人に言えない、早朝から仕事に行く、高級スーツの男の仕事を推理するという遊びが始まり、本題は流れた。わたしも、アルコールと彼らの明るいあたたかさがそのまま伝わる料理に慰められて、また家に帰った。
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