1-5.燃やせないもの

今年2月に、突然父が亡くなった。父、という存在は、わたしにとっては“生物学上の”という注釈がつくような存在で、その知らせを警察から受けたのは仕事の真っ最中だったが、電話を受けたあともそのままちゃんと午前中の勤務を終わらせられる程度には平静だった。


わたしには弟が2人居て、わたしが母と生まれた家を出たあとも、彼らが父と暮らしていたから、細かなことは彼らに任せておけばいいと思ったというのもある。


それからバタバタと支度をして、地元に向かい、慌ただしく葬儀を執り行った。


弟たちとは家を出てからもそれなりに親しくはしていて、だから彼らには彼らの生活があることは理解していた。


父は、昔からずっと商店街の小さな酒屋を営んでおり、同時に会社の経営者でもあった。だから、突然死んだ、それで終わりにはできない。店をどうするか、会社をどうするか、一つ一つ考えて、頭と体を動かしていかねばならなかった。


父と別れて苦労した母に、1人でも自分を生かして行けるような人間になるよう育ててもらったわたしは、幸いどこにいても仕事ができる資格を持っていて、だから、父の店と会社をどうするかきょうだいで決めるまでの間を預かることが出来る身分があった。


そんなわけで、今は朝のゴミ捨て場での出来事を反芻しながら、ひとりぼんやりと店番をして過ごすことができている。やらなければならないことはたくさんあるが、それを先送りにしても、どうせ背負うのは自分自身なのだ。だから今日は、未来の自分に仕事と後始末を丸投げにすることに決めた。

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