1-4.踏んではいけない場所

「なんのお仕事をしているの?わたしが知っている働き方じゃないみたい、生活の時間が。」ふと、ただ思いついただけの質問をする。いつもの雑談のつもりで。そんな上等な格好をしてするお仕事に興味もあるし、という下世話な声も、心の中に。


彼のまとう空気が、一段固くなるのが分かった。踏んでは行けないところを踏んだのが、一瞬で分かる。1拍間をあけて、「いう必要を感じないかな」そう言って彼は立ち去った。


自分も聞かれてと別に平気だったから、とつい言い訳したくなる気持ちがこみ上げる。自分がされて嫌じゃないことでも、人はされたら嫌なことは散々ある。そんなとこの年になれば嫌という程知っているのに、またやってしまった。


誰かの踏んでは行けない柔らかな部分を踏んでしまったという、この後味の悪い感覚。自分にだって、いくつもそれはあるはずなのに。

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