暁の祝日

kesuka_Yumeno

静かに騒がしい、新年

シャルモン公爵家3兄弟の幼少期


【sideシャルル】

「日の出を見よう!!」

寝る前にレオン兄上が叫んでいた。


暁の祝日……新年に日が昇る様を眺めると縁起がいいらしい。


でも、まさか私を巻き込むつもりだとは思っていなかった。


公爵家の嫡男にしては簡素で面白みのない部屋。

それでも、きちんと整っていた布団が勢いよく引き剥がされる。


私は目を擦りながら、答えた。


シャルル「何……眠いよ、兄上」


仕方なくシーツを掴むが、それでは暖がとれない。



レオンハルト「さっさと着替えて行くぞ!」



暗い室内で、勝手を知りつくした動きを見せる。

服を楽しそうに投げつけられた。

よく見えないのに、そう感じてしまう。


仕方なしに、もそもそ着替えると外套を着せられた。


シャルル「仕方ないなぁ」


それだけ呟き、扉をそっと開けた。

柱の向こうに影が揺らめく。

おそらくは、見張り……これから、護衛役を任されるのだろう。

新年早々、子守とはお疲れさまだね。


影に小さく会釈して、私は兄上に続いた。

廊下を渡り、人の気配が薄いことを確認する。いつも以上に静まり返っていて、まるで違う場所に迷い込んだみたいだ。


意に介した様子もなく兄上は進む。

固い手すりに手をかける。

石段を上るたび、響く音。

心臓の方がうるさくて、空気も冷たくなっていく。


屋上テラスに出た。

鍵はすでに開いていて、先客がいる。

遠くに城下の灯りが未だに揺らめいていた。



ラファエル「おはよう」



エル兄様が振り向いて笑った。


シャルル「おはようございます」

レオンハルト「おはよ、早いね!?」


弟達の声が重なっていることに気を止めた様子もなく、湯気の出るカップを差し出してくれる。


蜂蜜ミルクはいつもより甘かった。



ラファエル「そろそろかな……」



山向こうから、朝日が顔を出した

見張り台を兼ねているだけあって、よく見える


暖かい橙に、少しずつ世界が染まっていく。

そう思った瞬間、ミルクを飲み干した次兄が


「明けまして、おめでとう!!!」


山に向かって叫ぶ。


こだまが返ってきて苦笑した。

長兄と一緒に、それに重ね

「おめでとう」と呟く



今年も静かに騒がしくなりそうだ。


「今年もよろしくお願いします」

今度は強く願うように、私は言った。

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