第7話 隆二!追跡す

 午後6時 古川雑貨店


 婆ちゃんは、智也の擦り傷の手当てをしてやり、隆二の帰りを待った。

 心配性の爺ちゃんは、「隆二に何かあったんじゃろうか?署に電話した方がいいかのう?」と落ち着きない様子で座敷をウロウロしていた。

 書道教室を終えた清一は、「もう帰ってくるよ!あのダンプをとっ捕まえて、きっと取り調べでもしてるんだろう?」と皆を落ち着かせた。

香が「でも、あの時、隆二さん左手から血を流していて‥」と香も心配した。

「左手?左手痛めたんなら、クラッチレバーが掴み難いかもな?爺ちゃん、署に電話してみなよ!」というと、婆ちゃんがスタスタと黒電話に近づき受話器を取った。


 「あ、もしもし、古川隆二の母ですが、隆二、古川隆二はまだ署に戻りませんじゃろか?」と問い合わせた。電話口の向こうで、「おーい!古川いるか?お袋さんから電話だぞ!え!まだ戻ってない⁈ちょっと無線いれてみろ!あっ、お母さん?まだみたいなんで、分かったら折り返します!ガチャン!」と言って電話は切られた。

爺ちゃんは、「何かあったんじゃろか?」と余計にソワソワした。


 2時間後


古川雑貨店の電話が鳴る!

爺ちゃん、婆ちゃん、清一が一斉に受話器に向かった!

爺ちゃんが電話を取ると「はい、古川です!事故!隆二がですか?‥はい‥救急車!‥勝浦!

はい‥勝浦の塩川病院ですね、分かりました家族の者を向かわせます、すみません‥宜しくお願いします」と電話を切ると爺ちゃんはバタっと座り込んでしまった。

婆ちゃんは、「事故なんじゃな!爺ちゃん!容態は、生きとるのか?」と婆ちゃんは爺ちゃんをゆすった。

智也は、それを聞いて「お兄ちゃん!うわーん!僕のせいだ!」と泣き出してしまった。

爺ちゃんは、「容態は、わからん‥清一!勝浦の塩川病院に向かってくれるか?」と座り込んだままだった。

「わかった!」と清一は、壁にかけてある車のキーを掴み、庭に停めてある〝スバル360〟に向かった!

「私も行きます!智也をお願いします!」と後を追った。

婆ちゃんが庭先に出て「あんとんねぇ!気をつけて行ってきな!」と二人に声をかけた。


 「アイツ、もともとカミナリ族なんだぜ!」と対向車のヘッドライトに時折照らされ、清一は香に話し始めた。

「爺ちゃんにバイク買ってもらったのに、カミナリ族やってやがって、その頃は、白バイに追いかけられてたっけ、それが今じゃ追っかける方になって、警察学校行って、まあ、白バイ隊員になかなかなれなくてな‥やっと去年白バイに乗れるようになったのに‥」と清一の目には涙が浮かんでいるようであった。

香は、「縁起でもない事言わないでください!

大丈夫です!大丈夫」と自分に言い聞かせたが、

香の足はガクガク震えていた。


 2時間かけて、ようやく、スバル360は、勝浦の塩川病院についた。

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