第5話 置き去りのマジンガーZ
ある日曜日
智也は、例にもれず、古川雑貨店に来ていた。
今日は、店が休みで、婆ちゃんと爺ちゃんは、東京に芝居を見に行った。
そこで、留守番と智也の面倒を押し付けられたのが、白バイ隊員の隆二であった。
智也は、婆ちゃんが買ってくれたパズルであそんでいた。
隆二は漫画を読んでいたが、飽きていた。
そこで、隆二は智也に「なあ、智也、いい所連れてってやろうか?もしかしたら、オモチャが手に入るかもしれないぜ!」と誘惑した。
智也は、「いく!いく!」とパズルの途中で、隆二の袖をつかんだ。
隆二は、「よし!行くか!」と智也を連れ出した。
石橋商店街の外れ
隆二と智也は、商店街の外れにある一軒のパチンコ屋の前にいた。
隆二は、ポケットをゴソゴソ弄り、千円札を二枚出した。
隆二は、「ついてきな!」と言いパチンコ屋に入り、景品コーナーへ真っ直ぐ向かった。
パチンコ屋のカウンターの側にある景品コーナーには、オモチャが所狭しとならんでいた。
「うわー」と智也は、景品コーナーのショーウィンドウに
「智也?どれが欲しい?」と隆二が聞くと、智也は、迷ったが「マジンガーZ!」とマジンガーZのオモチャを指差した。
隆二は「マジンガーZな!800発か?わかった」と言い、カウンターに行って千円札を出して玉を500円分借りた。
隆二は受付の派手な化粧の女の子になにやら親し気に話しかけている。
「やだ〜」と言って女の子は、隆二の肩を叩いた。
智也は、相変わらずショーウィンドウに齧り付いていた。
隆二は、パチンコ台に座り、指で玉を弾き始めた。店内では、軍艦マーチが流れている。
智也は、ショーウィンドウと隆二の所をいったりきたりして「今、何発?」と、しきりに気にした。
母子家庭の智也にしてみたら、オモチャなど、滅多に買ってもらえず、マジンガーZにワクワクしていた。
覗きにきた智也に隆二が開いたチューリップを指差し、「見てな!ここへ、こうやって」と素早く二発弾き、二発ともチューリップに吸い込まれ、
一旦閉じたチューリップがまた開いた。
チーン!ジャラジャラ!玉が出て来た。
智也は、「すごい!ねえ、あと何発でマジンガーZ?」と齧りついた。
小一時間後
隆二と智也は、マジンガーZと沢山のお菓子を持ってパチンコ屋を出た。
横には、さっき隆二が親し気に話していた派手な化粧の女の子がいた。
そこに、智也を探して歩いていた香が、血相を変え現れた。
「ちょっと隆二さん!うちの子を連れ回して!
パチンコ屋?子供をなんてとこに連れていくのよ!」と怒っている。
隆二は、「いや、ちょっとオモチャとってやろうと思って‥」と余りの香の勢いに、のまれ言い訳を言った。香は止まらず、「貴方、警察官でしょ!そんな女性連れて‥ちゃんとした方がいいんじゃないですか⁈いくよ!智也」と智也の持っていたマジンガーZを取り上げ、隆二に返し、手を引っ張って帰ろうとした。
智也は、「僕のマジンガーZ!」と体重をかけ抵抗したが、香に引きずられた。
隆二はマジンガーZを抱えて唖然とした。
隣にいたパチンコ屋の女性に「もう行こう?何あの女!」と声をかけられたが、しばらく立ち尽くした。
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