後天性アレルギー持ちの勇者(全4話最終話)

 あれ……確かに宝箱はもう、目の前にあったはずなのに……


「死んでしまうとは、お前は(ピー)だ!! この(ピー)……(ピー)(ピー)(ピー)!!!」



 相変わらず、とんでもない剣幕で王様が責めてくる。


「お、落ち着いてくだされ! 王様!」


 王の隣では新しい大臣が王を宥めている。早速、王様の本性というかこの状況にドン引きしておられる様子だった。


「こやつが死んだということはどうせアレルギーなのだ! いや貴様のはもはやアレルギーでもない! 

 それをアレルギーと呼ぶならアレルギー持ちの方に失礼だ! お前のは(ピー)だ!

 この(ピー)持ちの(ピー)め!!」


「王様! 色々ダメですそれは!!」


「だって王様なんだもん! 言いたいことくらい言わせろ! (ピー)! (ピー)! (ピー)!

 どうせ誰かに触って、そいつが『5又』でもかけてたんだろう! あれほど禁止しているのに一向に学習しない(ピー)め!!」


 言われすぎな気もするが、返す言葉もないのが現状だ。

 怒られながら俺は、一体何があったのか死ぬ前のことを思い出していた……。


 * * * * *


 あれは……ようやく洞窟の中で目的の宝箱を見つけた時だった。

 

「待て! 勇者!」


 殺気を感じ、俺は構えて振り向くと、一人の少年が立っていた。


「僕は、お前に封印された魔王の孫にあたるものだ! 復讐のためにやってきた!」


「……無駄なことはやめよ。命は大事にせい。……俺がいうのもなんだがな……」


「そうだ! お前の弱点などとうにお見通しだ!! くらえ!!」


 そう言って、魔王の孫は大量の卵を投げつけてきた。



「ワア! 何をする!!」



 本気でそれが弱点だった俺は卵から逃げ回った。

 

「いいい命を無駄にするんじゃなあい!」


「貴様この状況でよくそれが言えるな!」


「そうじゃなあい! 卵のことだ! 卵を武器に使うなど鳥さんが悲しむだろう!」


「なるほど命とはそういう意味か。……そう思ってなあ、これは全部無精卵なんだよ!! それでもお前に当たればお前は死ぬだろう!

 知ってるんだこっちは!!」



 な! なんて倫理観の配慮ができたお孫さんなんだ! 魔王の孫のくせに! これは厄介だ!!

 

 俺は大量に投げつけられる無精卵を掻い潜り、なんとか孫の懐まで飛び込んだ。やはりまだ未熟だ。


「悪く思うな! 成敗!」


「ぐ!」


 * * * * *



 と、斬ったところまでは覚えているのだが……


 その後のことが思い出せない……。倒した手応えはあるのだが……。


「するとお前は、魔王の孫の投げつけた無精卵で死んだのか! 卵にはあれほど気をつけろっつたろうがこのガミガミガミガミ(ピー)!!」


「王様! 言い過ぎです!」


 新大臣はすでに泣きそうだ。


 それにしても何があったんだろう……?


「王様、私その……ものすごく嫌な予感というか……

 勇者よ、お前は宝箱の前で何と戦ったのだ」


「孫……と言っておった。魔王の……」


「其の者何をしにきたと?」


「『祖父の仇をとりにきた』と……」


「ああ、やはり……」


「なんだ大臣。お前の嫌な予感とは……」


「簡単なことにございます。『仇討ちにきた孫……』」


「「ん?」」


「『仇討ちにきた孫』にございます!  仇討ち! に! き ! た! ま! ご!!

 はい! どこに卵が隠れてるでしょうか!!」


「「…… ……仇討ち、に、き、た、ま……ご、あー」」


 我々の間に嫌な沈黙が流れた。


「「それもだめなのー!!?」」


「わ、私に聞かれても……」


「しかし宝箱の前までは行ったのだから、あとは勇者! 返り血を浴びるな! 

 それでアレルギー出ちゃうんだから!! (ピー)!!

 これで! 今度こそ宝箱が手に入るな!!」


「は! では行ってまいります!!」




 俺は今度こそ! と、城を飛び出した。


 ところで、俺がとりに行く宝箱の名前は『たまてばこ』だという事実を、誰も未だ知らない……。



 後天性アレルギーの勇者 了


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