第4話 義妹たちと買い物①

「隼人ー!まだー?」


日曜の朝。家では、咲彩の元気な声が俺の眠かった意識を覚ましてくれる。


「今行くから急かすな」


バッグを持って、階段を降りると咲彩がドアの前でぴょんぴょんと跳ねてた。


「も〜遅い!時間がなくなっちゃうよ〜」


「お前はうさぎなのか?あと、朝だから、時間はたくさんある」


「むー」


咲彩は俺をジト目で睨んでくる。


「君は乙女心がわかってないなぁ。そーいうのは否定しないで、謝るとこからなんだよ!」


「……へいへい」


「……二人とも、朝から元気ね」


ずっと黙って聞いていた玲奈は痺れを切らしたのか話しかけてきた。


玲奈は白いワンピースに薄手のカーディガン。学校で見る制服姿とは違い、どこか柔らかい印象を受ける。


(……私服、普通に可愛いな)


「……何か?」


俺の視線に気づいたのか、玲奈がこちらを見る。


「……何にも」


「嘘ね。顔に出てたわ。私の私服が変だと思ったのでしょう?」


(何故、そうなる?)


考えの路線はあっていたのに、最後で答えを外した。……天然なのかこいつは?


「違うよ。玲奈の私服姿が制服姿と違う雰囲気で可愛いって思っただけだ」


同居してから二日目で、仲を悪くするのは違うと思い、素直に言う。


「かわっ──?!」


言われると思ってなかったのか、一気に顔を真っ赤に染めると、そっぽを向いた。


「あーあ、隼人が玲奈を口説いてる〜」


「否定できないが、悪く言われるのか……。まあ、咲彩も可愛いぞ」


「ふふーん、咲彩は可愛いに決まってるでしょ〜。それじゃ買い物行きますか!」


咲彩を先頭にして、俺たちは近場のショッピングモールへと向かった。


これだけの会話でも咲彩はポジティブ思考で、玲奈はネガティブ思考ということを知れた。


ちなみに──しばらく、玲奈の顔が真っ赤だったのはここだけの話。


〜〜〜


ショッピングモールに向かうまでは数十分。先頭の咲彩が振り向いて、話しかけてくる。


「やっぱさ、隼人って学校と家では違うよね?」


「自覚はしてる」


咲彩の言う通り、俺は学校では他人と関わることはしなかった。……単にめんどくさいのだ。何故か気を遣ってまで、関わることが。


「でも、家だとこんなにお喋りなんだね」


「お前たち二人が来たからな。人数も増えれば会話も増えるだろ」


「私たちは学校での姿しか見てないけど。あなたがそう言うのはなんかおかしいわね」


横に並ぶ玲奈も咲彩の意見に賛成してる。


「本人の前で、堂々と言えるな……」


「でも、そんなに気にしてないでしょ?」


「……」


玲奈の的確な一言に図星をつかれ、俺は言い返せなくなる。


「隼人の噂はよく聞くもんね」


「そうね。『実はロボットだ』や『裏では女子の隠し撮りしてる』とか」


「そんな、噂出回ってるのか……」


「まあ、これは噂の一部に過ぎないのだけれど」


「どんだけあるんだよ……。でも、俺のその噂聞いて、二人は普通に接してくれるんだな」


「まあね!私は隼人がそんな事する人じゃないって感じてたし」


「私も。だって他の人と関わらない『陰キャ』で『人見知り』なあなたがそんなことする勇気がある訳ないわ」


「……酷くね?」


一部事実だが、普通に美少女から言われると何か辛い。


「ふふっ、冗談よ。あなたが誰とも関わらないのは何か理由があるからでしょう?」


「……まあな」


やはり、昨日も思ったが、玲奈の観察眼は鋭い。今まで学校で話したことないのにこちらの事情を汲み取っている。


「無理に聞く必要はないけれど、あなたが一人で抱え込む必要もないわ。いざとなったら話してちょうだい。私たちは『家族』なんだから」


玲奈の真っ直ぐ見つめられ、言われたその言葉は俺の胸に深く突き刺さった。


(『家族』か……)


今まで、人との関わりを避けてきた俺に支えてくれる存在ができた。


─それを知れただけでも、俺は十分すぎる程に嬉しかった。


「私にもできることがあったら教えて欲しいな」


玲奈のセリフに続いて、咲彩もこう告げる。


「ありがとうな二人とも。いい妹を持ったわ」


何故か、買い物の行きなのに温かさで泣きそうになった。


〜〜〜


「着いた〜!」


俺たちはあれからも会話を続け、気づけばショッピングモールに来ていた。


「……ところで、二人は何を買うんだ?」


「今のところは、日用品と絵里奈えりなさんからご飯の食材って言われてるんだ〜」


「……そうか、母さんは重信さんと出かけてるしな」


「私は、ただ付き添いだから。咲彩が迷子にならないようにね」


「玲奈ったていつも私を子供扱いする!」


「だって、目を離したら迷子になるじゃない」


「……うっ」


「じゃあ、俺はモール内うろついてるから。何かあったら連絡してくれ」


「また後でね!」


「……隼人も迷子にならないでよね」


「咲彩と同じじゃないんだから」


「それ、どういう意味?!」


ぷんぷんと怒る咲彩を無視して、俺は二人から離れ、モールを散策する。


「あれ……隼人?」


だが、俺はこの後、モールを一人でうろつくことに後悔するとは思ってなかった─

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幼馴染に振られた俺、義兄になる。〜義妹はクラスの氷姫と太陽姫でした〜 空乃 猫丸 @Nekomaru_Sorano

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