第14話

 騎士や魔法使いというのは、ほぼ全ての国民から敬われる存在だ。鍛錬を重ね、己の身一つで、あるいは神秘的な魔法で国を発展させ、守る者。並大抵の努力ではその地位に就くことはできず、魔法使いは生まれながらの才能がなければ目指すことすら許されない。


 だからこそ、そんな地位に就くアレンやセレーネのお願いを、よもや断る者がいるなど想定もしていなかったのだろう。二人からすれば唖然の一言である。


「その、アメリさん。魔法使いとして国のために尽くすことは大変名誉なことですわ。もしお願いを聞いていただけるのであれば、アメリさんはその力に相応しい地位と名声を授かることが出来ますのよ? 一体どうして……。」

 アメリは無感情な声で言う。

「お前達の言う厄災とやらが我を害することは出来ない、故にどうでもいい。名声とやらにも興味はない。リリーがここにいるのだから、我もここにいる。厄災のことは、お前達でなんとかするがいい。」


 アメリはただ自分にとっての事実を述べただけで、そこに悪意はないのだろうが、あまりにも敵対的な返答に聞こえる。リリーでさえそう感じるのだから、アレンとセレーネは尚更だろう。

 リリーは思わずヒヤリとするが、同時にアメリが自分の傍にいることを優先してくれるという事実に嬉しくなり、横にいるアメリとの距離を更に縮め、ぴったりとくっついた。


 アレンは案の定アメリの発言に気分を害したのかやや顔を顰めていたが、セレーネは寧ろその発言を聞き笑顔を取り戻す。


「まあ! ではリリーさんとご一緒なら、問題ないのですね?」

「えっ」

 ここで自分が当事者になるとは思ってもみなかったリリーは、思わず間抜けな声を漏らす。

「リリーさんがいる場所に、アメリさんも共にいることを望まれているのでしょう? では、お二人ともお連れすれば問題ないですわね。リリーさん、いかがでしょう。私たちと共に、中央の都市までご同行いただけますか? もちろん、このお話に同意いただけるのなら、報酬はたっぷりとお渡しいたしますわ。」


 生まれてこの方田舎者の自分が、都市へ? と内心躊躇っていたリリーだが、その言葉を聞いて目の色を変える。

 報酬を! たっぷりと! セレーネの提案は、貧しいリリーにとって余りにも魅力的すぎた。

 リリーはすぐさま精一杯の可愛い顔でアメリを見上げ、媚びる様にお願いポーズを取る。


「アメリ、私中央の都市へ、アメリと一緒に行きたいわ……。」

 アメリはリリーの奇妙な仕草を見て一瞬怪訝そうな表情をした……ような気がしたが、すぐに真顔に戻り、リリーの頬へそっと手を添える。


「リリーの好きにするといい。」


 リリーはそれを聞いて大きな喜びの声を上げ、その喜びを表現するかのようにアメリに抱き着く。セレーネも勝ち誇ったような顔でうんうんと頷く横で、アレンだけが話の流れの速さについてこれなかったのか、困惑した顔で立ち尽くしていた。

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