第12話

「ま、まりょく……ですか?」

「ええ、魔力です。私たち魔法使いが魔法を使う際には、精霊の力を借りる必要がありますわ。そうして魔法を使った場所には独特の残滓のような、痕跡のようなものが残りますの。魔力は精霊の……つまり自然の力そのものですから、実際には世界中のどこにでも存在するものですが、先ほど述べた魔法を使った後特有の痕跡が、この家には特に色濃く染み付いているのですわ。」

 これはもう、明らかに、何をどう考えてもアメリの仕業と確信せざるを得ない。

 これってもしかして、相当危ない状況なのではないか? とリリーは危機感を抱く。だってもう魔力の痕跡とかバレてしまっているし、そんなものが分かるなら裏庭の畑なんか見られたら一撃で終わりだろう。

 別にアメリが魔法を使えること自体は悪いことでは無い、はずだ。だがアメリが人ではないことがバレてしまったら、そしたら……どうすればいいの?

 リリーはアメリの狂暴さや残酷さがいつ自分に向けられるか恐れつつも、アメリは自分のことは傷付けないだろうと根拠のない確信を抱きつつあり、そのせいで離れがたく、手放しがたく、そしてそれが人に真実を話すことを拒ませる理由となっていた。


 リリーは答えに窮して黙り込んでしまう。それが余計に怪しく見えてしまうことは分かっていても、リリーにはこの場をうまく切り抜ける方法を思いつくことがどうしてもできなかった。

 そんな様子を見て、アレンは疑わしいという目線を隠し切れずにリリーへと向けてきたが、セレーネはやはり微笑んで「今すぐに話していただけなくても構いませんわ。」と告げる。

「これは私の興味本位であって、本題ではございませんもの。ただ、調査が終わった後で私にだけこっそり教えてくださるかしら? 魔法が使えるものは国へそれを申告しなければならない……リリーさんからは精霊と通ずる力は感じませんから、ここに住んでいらっしゃるもう一人の方かしら? もしその方の仕業なら、その方にお話しを伺わなければなりませんから。」

 以前服屋のサラさんや村の人たちにアメリと同居していると話したことがあったが、もうそこまで調べられているのか。有能である。あるいは、田舎は人の噂が広がるのが早すぎるのか。

 リリーが項垂れて返事をすると、二人は目を見合わせて立ち上がる。どうやら外で待機していた数人を引き連れて、森へ調査へ向かうようだ。リリーは全員が森へ入っていったことを確認してから、急いでアメリの元へ向かう。


「アメリ~! どうしましょう? 話は聞こえていた? あの人たち、アメリのこと完全に気付いていたわ! 貴女が連れ去られたり、た、逮捕されちゃったり、もっと酷いことになったらどうすればいいの……!」

「気にするに値しない者達だ。我は気にしない。リリーも気にするな。」

「気にするわよ! いい? セレーネ様は、貴女が魔法使いだって確信しているのよ。」

「我は魔法使いではない。」

「でも魔法が使えるじゃないの。」

「……魔法が使えるものを人間がそう呼ぶとしても、我はそれに当てはまらない。」

「人間じゃないから魔法使いでもないって言いたいの? 呆れちゃうわ! とにかく、魔法が使えることはもう隠しようがないけど、人じゃないってことは絶対ぜったいぜーったいバレちゃためよ。今は染粉やお化粧をしている暇はないから、フードを深くかぶって、手袋もして、肌を露出しないように、顔を見られないようにね。」


 アメリはほんの僅かに眉を潜めたが、そうする必要があることは理解しているようで、仕方なく頷いた。

 リリーが先行きを心配しそわそわと家の中を行ったり来たりしていると、暫くして調査隊の人たちが如何にも深刻そうな顔をして森から戻ってきた。

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