第6話
「ああ、アメリ、貴女ってばなんてことを……。もっと普通に話すことも出来るでしょう? ほら、私の真似をして話すのよ。」
「しない。」
「貴女最近ほんとうに困ったちゃんね! 私の教育は間違ってないはずなのに、どうして……。」
あの後何とか無事にアメリのサイズに合った既製服(若干、胸元やウエスト部分をお直しはしてもらったが)を購入し、今は少しばかり村を散策し、久しぶりに会う人と挨拶したり世間話をしている最中だった。
村のはずれに住んでいるリリーにとって、村へ来た際の情報収集はそこのコミュニティに属しているためにも重要なものだ。
食べ物の屋台や飲食店を見るたびにアメリがそちらへ向かって素早く歩いて行くので、リリーはアメリをお店から引き離したり、たまに食べ物を買い与えたりして、その度に店員や知り合いと世間話をする。大抵の場合、アメリは会話には参加せずジッとリリーと相手の会話を聞いているだけだったが、彼女は彼女なりに新しい情報を吸収しているのだろう。
「そういや、この間あんたの住んでる辺りで火事でもあったか? 森のほうから煙が上がってるのを見て、すわ何事だって少し騒ぎになったんだよ。幸い、すぐ消えたようだったけどさ。」
「あ、あはは……。」
まさか魔法であの辺一帯を燃やし尽くしてなんなら今はそこで農業をしています、などと言えるわけがない。
「その……少し前に料理に失敗しちゃって、その時の煙がすごかったので、それかもしれません……。ご迷惑をおかけしてしまってすみません。」
「いやいや、あんたが無事ならそれで良いのさ。それにしたって、最近どうも野生動物が狂暴化しているって知らせがあったりどうも物騒でね。まだ村の中心部までは出てきていないようだが……あんたは森の近くに住んでるだろう? 脅すわけじゃないが、気を付けなよ。一応、村長が中央の都市まで調査要請を出しているから、すぐに事態は収束すると思うけどさ。」
野生動物の狂暴化? そんなのは聞いたことがない。だが……別に殺人鬼が出たとか、大きな自然災害が発生したとかではないし、調査要請も出しているなら大したことではないのだろうか? リリーは困惑しつつもお礼を言い、アメリと共に帰路に着く。
「アメリ、貴女も聞いた? 野生動物が狂暴化しているんですって。怖いわね……。」
「森のせいだろう。」
「森? 動物そのものがおかしいんじゃなくて? 別に土砂崩れとか、変な異常はないように思うけれど。」
「……。」
アメリはもの言いたげにリリーを見つめたが、意味深に黙り込む。ふさわしい言葉を探して戸惑っているようにも見えたし、何かを言い淀んでいるようにも見えた。
「リリーのことは、我が守ろう。何も、お前が……リリーが心配することはない。」
「あら! 頼もしいわね、かわい子ちゃん。まだ一人でお風呂にも入れない貴女が、どうやって私を守ってくれるのか、楽しみにしているわ。」
リリーが揶揄うようにそう言ってアメリの頬をつつくと、アメリはやはりもの言いたげにリリーを見た後、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
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