第2話
窓から差し込んできた朝日が眩しくてリリーの意識が浮上する。
(私……生きてる? 生きてる……のよね?)
昨日の出来事が恐ろしく、リリーは目を開けられないまま手だけ動かして周囲の様子を探ろうとする。傍から見たら滑稽な光景だ。リリーは自分が転がっているのは土の上ではなく木の床の上であることを確認し、少し上に手を伸ばすと馴染み深いお気に入りのブランケットの手触りを感じて、ここが愛する我が家であることを確信する。
(もしかすると昨日はヤケ酒をして、そのせいで変な夢を見ていたのかもしれないわ。きっとそうよ! 床で寝ているのもそのせいね。お酒を飲んだ記憶はないけど……。)
リリーは自分が生きていることを嬉しく思いつつようやく目を開ける。そうして一番に目に入ったのは愛する我が家ではなく、視界一面の白と紫だった。
「っ……!……っ!!?」
リリーは叫び声も出せないまま壁際まで一瞬で後ずさる。目の前の少女もどきはその様子を感情の読めない瞳で見つめていた。
い……いる!
リリーは再び気を失いそうになるのを気合でぐっと堪え、目の前の生き物をじっと見つめた。髪の毛は床につくほど長く、絵具を真上からぶっかけたように真っ白だ。肌も同様に真っ白で、色彩があるのは瞳の紫のみ。昨夜は光もなしにギラギラと光る野生動物のような瞳に恐怖したものだが、日の光の下で見るとそれはキラキラと輝き、一番きれいなアメジストはきっとこんな色と輝きなのだろうとリリーは漠然と思った。
背丈はリリーより少し低いくらいだろうか。10代半ばの子供のように見える。今までこんなに美しい人(人ではないのだろうが)を、彼女は見たことがなかった。
そしてその美しさは彼女の頭にあったあらゆる疑問―――なぜ自分もあの少女も家にいるのか、どうやって帰ってきたのか、この子は一体何者なのか、など―――を宇宙の彼方へ放り出させた。
どうコミュニケーションをとれば良いのか迷った末に、リリーが恐る恐る指を少女へ差し出すと、少女も同じように指を差し出す。
二人の指が触れ合ったとき、リリーはもう目の前の存在は危険じゃないと確信するような、なにかしてあげたいような、もっと触れていたいような、生まれて初めての奇妙な感覚に陥った。
「……あなた、私の言っていることがわかる? 言葉は通じているのかしら?」
「……。」
「通じていないのね……、当たり前か。まずは名前から確認してみましょう。私はリリーよ、リリー。わかるかしら?」
リリーは何度か自分を指さしリリー、と繰り返した。少女もその意図を理解したようで拙くリリー、と繰り返す。
「そうよ! あなたの名前は? 私、リリー、あなた、?」
少女は自分の名前を聞かれていることには気づいているのだろうが、暫く黙り込んだ後ジッとリリーを見つめた。
「名前、ないの?そう……、困ったわね。せめて呼び名がないと不便だわ。ならアメジストからとってアメジー……いや、アメリなんてどう?アメリよ、ア、メ、リ!」
アメリは理解したのかしていないのか、再びジッとリリーを見つめた後、小さく何度かアメリ、と繰り返した。
「そうよ、いい子ね。それじゃあ、まずは……服を着ましょう。」
「……?」
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