第7話 伝説のアイドル
「なあ、本当に辞めるのか?俺、K-POPには全く詳しくないけど、それでもまいちゃんがめっちゃすごいってことだけはなんとなく理解してるんだよ。今まいちゃんが辞めるって言い出したら大問題になるんじゃないの?」
「まあ、問題にならないって言ったら嘘になるけど…でもたぶん大丈夫。途中で契約を解除するわけじゃなくて、ちゃんと契約期間を全うしてから新しい契約を結ばないだけだから」
「いや、契約とかの問題じゃなくて…本当にいいのか?まいちゃんがずっとあいつのこと忘れられなかったのは分かってるけど…さすがに後悔しない?」
「しないよ。私、この9年間、自分のすべてを出し尽くしたって自信を持って言えるから。あと、これはちょっと傲慢に聞こえちゃうかもだけど、別にやり残したこともないんだよね。アイドルとして目指せるものはほぼ全部成し遂げちゃったから」
玲佑は舞香の言葉が傲慢だとは感じなかった。逆に今まで彼女が成し遂げてきたことに対するプライドと、それを成し遂げるためにしてきた努力が垣間見えて、「やっぱこの子はカッコいい」という素直に思った。
「すげぇ。言ってることがイブラヒモヴィッチじゃん。カッケェわ」
「イブラヒムミッチ…?何それ?」
「『イブラヒモヴィッチ』ね。引退したサッカー選手だよ。自分のことを神だとか伝説だとかって言ってた人。で、実際にそれだけの実力があったんだよね」
「それ、褒め言葉で合ってる?私、自分が女神だとか伝説だとか一言も言ってないんだけど」
「間違いなく褒め言葉で合ってるよ。というか言っていいんじゃね?俺みたいにK-POPに興味がない人間でも『
「いや、それは褒めすぎ。でもありがとう。…それにしてもれいくん、面白い人だよね。その『伝説のアイドル』ともう10年以上友達やってるのにさ、うちのグループの名前『しか』知らないなんて。本っ当に興味がないんだね?」
「い、いやそんなことないですよ?」
玲佑の反応が面白いと感じた舞香は、少し意地悪な質問をしてみることにした。
「そう?じゃあ聞くけど、うちのメンバーは何人?」
「4人!」
「…それ、本気で言ってる?」
「えっ!?違う!?ごめん、5人だっけ?」
「いや、4人で合ってるよ」
「おい!」
「ごめんごめん。ふふ。でもれいくんがそういう人だから、私も安心してこんなこと頼めるんだと思う。いつもありがとうね」
「どういたしまして。…でも正直、こっちは自分が余計なことをしたせいで何百万人ものファンが傷ついて、数十億の損害が発生するんじゃないかと思うとめっちゃ気が重いんだよね」
「それは違うよ」
「…そうかな」
「そうだよ。『何百万人』ではなくて『何千万人』のファンだし、金額も『数十億』じゃ済まないから。少なく見積もってもたぶん『数百億』だよ」
「……」
「でもそれはれいくんのせいじゃないから。すべて私が決めたことで、私が背負うべきものだよ。そして私は、その重さをちゃんと理解した上で、それでもこれから選ぶ道を歩みたいと思ってる」
「…そっか」
その言葉を聞いた玲佑は、舞香の決意が変わらないだろうということを理解した。そして舞香の友人として、そして舞香があれだけ強く想っている優の親友として、二人の将来のために自分ができることはなんでもしてあげたいと思った。
「まだ私から直接連絡はしない方がいいよね?たぶん」
「そうだな。最近の様子を見る限り、今は女性不信に近い感じになってると思う」
「だよね、じゃあ、私はとりあえずこっちで話を進めておく。優のフォロー、よろしくね?あと、もう他の女が寄りつかないようにしっかり監視もしといてね」
「いや、注文多くね?」
「でもやってくれるんでしょう?」
「できる範囲でな」
「えっ、ダメだよ?できる範囲ではなくて、完璧にやってもらわないと困る」
「厳しい…。『伝説のアイドル』は言うことが違うな。分かったよ、頑張ってみる。…それにしてもこんなことになるとはね。世の中、何があるか分かんねーな」
「本当にね。まだ私にもチャンスが残ってたなんて夢にも思わなかったよ。…優が辛い思いをしているのにこんなこと言うのは申し訳ないけど、正直、めっちゃ嬉しい。私ってとんでもなく強運なんだなって改めて実感しちゃった」
「喜んでいいと思うよ。あいつには申し訳ないけど、俺もあいつがあんなのと結婚しなくて良かったと思ってるし。まいちゃんなら絶対にあんな真似しないじゃん」
「もちろん。10年間純愛を貫ける女だからね、私。若干ヤンデレ入ってるかも?」
「…完全には否定できないのが怖ぇ。しかも金も権力も持ってるからタチ悪い。でもまあ、俺にできることはするよ」
「ありがとう。れいくんがいてくれて良かったよ。本当にありがとうね。じゃあ、優に私から連絡しても良さそうな感じになってきたらまた連絡して?こっちも進捗があったら共有するから」
「了解。じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
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