第13話 近づかない手

夏が近づき、行事が増える。


 校外学習。

 部活動の発表。


 光の兄妹は忙しくなる。


「一緒に行動する時間、減ったね」


 帰り道、妹が言う。


「それが普通だよ」


「……そっか」


 少しだけ、寂しそうだった。


 その背後で、視線が一つ、離れていく。


 護衛ではない。

 監視でもない。


 ただの“確認”。


 それだけで十分だった。



 影の王座では、兄妹が並んで資料を見ていた。


「光の側は、順調」


「異変は?」


「今のところ、なし」


 妹は資料を閉じる。


「ねえ」


「なに?」


「いつか、気づくと思う?」


 兄は即答しなかった。


「……気づかせないために、ここにいる」


「それでも?」


「その時は」


 一瞬、間が空く。


「ちゃんと、選ばせる」


 妹は、それ以上聞かなかった。

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