第4話 深夜の追走劇

全ての作業が終わった、はずだった。

午後八時。のんびりとうたた寝をし、早めの夕飯を済ませていた私たちに、非常識な指令が下る。


「僻地の情報管理室の奥、あと30台残ってる! AとL、今すぐ行って!」


再び、真っ暗な病院の奥へ。

そこで、事件は起きた。


「すみませーん、ちょっとトイレ離脱しまーす」


あまりの疲労と夜になって急激な冷え込みで、私は猛烈な尿意に襲われた。一人で迷路のような通路を抜け、用を足して戻ろうとしたときだ。


「……ここ、どこ?」


人の気配がない場所には、通路の明かりもない。何度か確認しながら、進んでいたのに、三叉路で、見覚えのない暗い通路が増えていた。


「え? 十字路?」


その先の渡り廊下は封鎖されており、そうなるともはや自分がどの繋がりの棟にいるのかも微妙だった。階は3階。物流チームが通るのを待つか、誰かに連絡するしかなかった。唯一メガネと連絡先を交換していたが、全く気がついてくれない。


途方に暮れていたその時、前方に懐中電灯を持った「物流スタッフ」の男を見つけた。


救世主だ! 私は駆け寄ろうとした。


「あの! すいません! 物流さんっ、あーし、Lチームの山中なんですけど!」


だが、深夜の廃墟のような研究棟。

闇の中から現れたのは、紺色の作業着を着た、金髪縦ロールに黒い肌、そして暗闇で不気味にギラつくアイメイクの女。 男の目には、それがどう映ったか。


「ぎゃあああああああああ!!!」


暗く、低くなった棟の天井に反響した。暗闇が前にも後ろにも続いている。


男はカートを押し、脱兎のごとく走り出した。


「待って! 逃げないで! あんたを捕まえないと、あーし一生ここから出られないの!」


必死に私も追いかける。安全靴で、バタバタと廊下を走る。


「こわい! 来るな! 助けてくれ!!」


「助けてほしいのは、こっちだっつーの!!」


深夜の病院で繰り広げられたデッドヒートは、Aチームが待機する部屋の前まで続いた。


「……ハナコさん、何しようん。なんで鬼ごっこ? この忙しいのに」


豪快ネキの冷めた声が響いたとき、物流スタッフの男はカートの前に腰を抜かして震え、私は肩で息をしていた。


「あ。ごめんなさい、わたし連絡に気がつかなくて」


メガネが両手を合わせて拝んできた。


(閉じ込められるとこだった……)


考えるだけで、ゾッとした。

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