第2話 混迷のレディースチーム
集合場所にいたのは、十八歳から七十代まで、北は北海道、南は九州から集まった八〇数名の黒いコート、黒スーツの集団だった。
私は、くるくるドライヤーで、チリチリの癖毛を伸ばして縦ロールを作り、ギラギラのアイメイクを施していた。紺色の地味な貸与作業着と、気合の入ったヤマンバメイク。浮いている? 知っている。でもこれが、私の戦闘服だ。
••✼••
チームはAからLまでの十二組。私は最後尾、Lチームに配属された。
「おはようございますー! リーダーのナナサキです! 今回は、慣れてきた頃合いに女性限定スペースの配置になるので、よろしく!」
関西弁のナナサキさんは、ヒョロリと縦に細長い男性リーダーたちより、小柄だが物おじせず頼りになりそうだったが、すぐに致命的な弱点が発覚した。
彼女、地図が全く読めない。
「えー、あそこの三階の角を曲がって、あ。ここやな。これこれ……あれ? ここ、さっきの解剖室の前ちゃう?」
病院は迷宮だ。特に歴史のある研究棟は、セキュリティを鑑みて地図が配布されない。カードキーと物理キーを使い分け、特定のルートを通らないと遭難する。
そんな私たちの命綱が、物流スタッフの男性陣だった。
「ナナサキさん、任せてください。僕がカードキー持ってますから、最短ルートで案内しますよ!」
「おー。助かるわ〜。物流さん、頼りにしてるでー」
物流の私たち担当のチームリーダーはシャキシャキと現場を回し、私たちが設定するPCやケーブル、カードリーダーを的確に運び込んでくれる。彼らがいないと、私たちは一生、三階と地下一階の間で彷徨うことになっていただろう。
Lチームのメンバーは個性的だ。
小動物のような愛らしさでも腕は確か、淡々と話す「プレーリードッグちゃん」、眼光鋭い「豪快ネキ」、淡々と仕事をこなす「キット職人さん」。そして、どこかズレている「メガネ」、美人の三人の子持ちの美魔女「広島姐さん」そして、黒ギャルの、私。
現場で働いている人たちの邪魔にならないよう作業は迅速にというのは鉄則だ。
特に産婦人科エリアは厳格だった。
「女医さんの邪魔をしないで。列を乱さないで!」と広島姐さんからキツく言われているのに、メガネは何度も列をはみ出し、そのたびに怒られては、くるくると動き回り、ピシーッと壁に背中を向けて張りつく。
その姿は、仕事をしたくないあまり、壁と同化しようとしているようにも見えた。
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