迷宮と黒ギャルの祈り
柊野有@ひいらぎ
第1話 召集令状とヤタガラス
年末年始、世間が浮き足立つ時期に、私のような人間が必要とされる。
山中ハナコ、二十五歳。職業、メーカー事務員。
見た目は自他共に認める「ナチュラル黒ギャル」だ。
父は黒人、母は日本人。
小さい頃に離婚した父の血が、私の肌を健康的な褐色に染めている。
ある日、掲示板で見慣れない藁半紙のプリントを見つけた。
『年末ノ御時間ヲ御恵与乞フ』
「ん?」
旧字体と、今では使われなくなった言い回しがびっしりと並ぶ。
レトロというより、どこか現行の時間から外れた紙だった。
••✼••
募集主ノ名ハ八咫烏(ヤタガラス)。
病院内パソコン入替作業ニ付、臨時作業員若干名募集ス。
重量物ノ取扱ヒハ専門業者之ヲ担フ。
作業者ハ定メラレタ手順ニ従ヒ、指示ノ通リ作業スルコト
••✼••
大学病院でのキッティング。面白そうだと食指が動いた。
場所は、地方都市にある「原爆ドーム」のすぐ近く。そこには、被爆直後から現代に至るまで、当時の子供たちが大人になり、全国へ散らばり、老いていくその全過程を定期検査して見守り、体調を管理し続ける「原爆研究棟」があるという。
「山中氏、それ行ってみる? 晩ごはん奢るよー。ホテル代も出すしさ」
当日に行く予定のメンバーに逃げられたという上司から声がかかった。
「あーしが、行かせていただきます」
夜通し車を飛ばし、カプセルホテルで泥のように眠り、原爆ドームをお情け程度にながめて、私は朝七時半、決戦の地に立った。
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