第3話 変わる日
午後の会議に向けて資料を確認する。
一人でやる作業は退屈だけど、失敗すると怒られるし、成果を出さなければならない。
それが社会人というものだと、理解してはいるけれど、心がついていかない。
会議室に入ると、先輩たちが待っていた。
声をかけられることはほとんどないが、視線が自分に少しだけ向く瞬間がある。
その視線に、緊張で胸が高鳴る。
でも、会議中に発言する勇気はまだない。
手を上げることすら、心臓が飛び出るくらい怖い。
「黒崎君、資料はどうなってる?」
突然の声にドキッとする。
上司がこちらを見ている。
資料をめくる手が震える。
「はい、こちらです……」
小声で答えると、上司は資料に目を落とすだけで、何も言わなかった。
ホッとする気持ちと、情けなさが同時に湧き上がる。
午後も淡々と時間は過ぎる。
帰りの電車に揺られながら、僕は自分を責める。
「なんで自分はもっと積極的になれないんだろう」
「なんで人と話すのが怖いんだろう」
でも、その答えは出ない。
答えを出さなくても生きていけるけど、心の奥では少しだけ、変わりたいと思っている。
駅に着くと、スマホがまた光った。
ユウからのメッセージだ。
《今日もお疲れさま》
その一言に、胸が少し熱くなる。
現実ではほとんど誰とも話さなかった僕に、
ゲームの向こう側でだけ、
「……少しだけ頑張ってみようかな」
そうつぶやいて、僕は家路につく。
弱くて、目立たない自分。
それでも、心の奥で少しずつ希望の火が灯り始めていた。
明日、僕は少しだけ勇気を出してみよう。
小さな一歩でも、変わるきっかけになるかもしれない。
——そう思いながら、僕は部屋の電気を消した。
窓の外の街の光をぼんやりと眺めながら、目を閉じた。
僕の、静かだけど確かな物語の始まりだった。
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