一日目 キ
「気分でも悪いのかい? えーと」
「ハジメです。とりあえず助けて頂きありがとうございます」
灼熱の過剰な恵をもたらす太陽光から庇ってくれる巨木、世界樹の根元の日陰で礼を告げる。
この、巨大未開拓大陸『ギガノドアトランティカ』に来て、色んな種族の人に何度も助けてもらったが、命を救われたのはこれで二度目だ。
だから、私は
「このご恩は忘れません。では」
立ち去ろうとした。
だって、そうでしょう? 絞首刑から免れたら、誰だってこの人生を得る好機を無駄にはしまい。きっと、仏陀もキリストも、アッラーの方も許して下さるわ!
「いや、駄目だって」
「ぐえー!」
命の恩人の悪魔は、私の首輪と繋がれた縄を引っ張る。
「いいかい? ハジメとやら。お前に逃げられたら私が今度は絞首刑送りになるんだよ? 命の恩人を殺す気かい?」
「我が家の家訓では、お礼と支払いは相手の命で済ますのが教えですので」
「なにそれ? 何処の蛮族だよ。こっわ」
恩人の悪魔は笑う。
私は知っているのだ。
「まあ、ハジメ座りなよ。とりあえず」
この世界に来て早半年、右も左も分からない私を、色んな種族の人が助けてくれた。それはもう懇切丁寧に。ええ、姫君をあやすかのようにだ。
彼らは教えてくれた。
この世界では使えない渋沢栄吉と北里柴三郎が入っている私の財布を嘲笑し、無一文同然の私に無料でご教授してくれた。
「異世界人のあんたに頼みたいことがある」
ああ、この恩人の悪魔も一緒だ。
他の先輩方も、皆一様に、挨拶を返すかのように、揃って『異世界人異世界人』『頼み、依頼、お願い』って言うのだ。
「その頼みを断ったら?」
「そんな事を言える立場じゃないだろう? お嬢ちゃん?」
私は唇をかみ、右手で半年前は、腰まで伸びていた黒髪の襟足の首筋を触る。そして、蜃気楼で両端がかすむ世界樹の巨木を背にして腰を下ろす。
「おーこわ。睨まないでよ」
また、気を許したら今度こそ私の最後になるだろう。
私は目の前の軽口を叩く恩人の悪魔を睨み上げる。
「それで、頼みって何ですか?」
「
「
「無賃乗車だって! なんて悪い子! いや、異世界人だ! そんな酷いことはしません!」
意外だった。
と、同時に、少し安心した。
嬉しかった。
そうだよ。いくら、今まであった連中が碌でもない奴だとしても、よく理解もしないで、この恩人を同一視するなんて、私が間違っていたんだわ。
ごめんなさい
「ちゃーんと、料金分の
悪魔は口角を鎌のように煌めかせ、足元の棺桶の蓋を蹴りでどかす。
そこには、尊い命を塵芥に変換する銃器と弾薬、爆弾で溢れていた。
ママ、パパ、ポチ。私は殺人者にされそうです。
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