第45話 タイムスリップ
ビッグ・ディアマンテへの潜入。それは武尊にとっての初陣だったが、変美にとっては、ある「恨み節」から始まった作戦でもあった。
■ 奪われたバカンス:探偵の宿命
「……信じられない。私、本当なら今頃、南の島でトロピカルドリンクを嗅いでいたはずなのよ」
変美は、ビッグ・ディアマンテの重油臭い「清掃員控室」で、つなぎに着替えながらマサに毒づいていた。探偵になって以来、凶悪事件が数珠つなぎに発生し、予定していた旅行はすべてキャンセル。今回の公害調査も、文字通り「骨休め」を「骨折り損」に変えた。
「所長、今は我慢してください。ここを叩けば、次は世界一周旅行に行けるくらいの報酬が……」
「その言葉、名越の時も聞いたわよ!」
■ 岩成の制裁:地獄の現場
武尊、変美、マサの三人は清掃員として最下層の排水ピットに潜入した。そこで彼らを待ち受けていたのは、現場責任者の**
「おい! 新入り! 何ボサっとしてんだ!」
岩成の安全靴が、不意に変美の脇腹を捉えた。
「ぐっ……!」
「ここは遊び場じゃねえんだよ! さっさとあのヘドロを掻き出せ!」
変美の目が鋭く光る。その鼻は、岩成から漂う**『古い火薬』と『身分を偽装するための安物の香水』**の匂いを見抜いていた。だが、今は正体を見せるわけにいかない。武尊が割って入り、岩成の視線を逸らした。
「……親父のライター、この奥にある。間違いない」
武尊は、岩成の背後のダクトから漏れる、軍司が愛用していた「ジッポオイル」の匂いを捉えていた。
■ 超科学の暴走:天文法華の乱へ
一行が排水ピットのさらに奥、地図にない隠し区画へ踏み込んだ時、異様な光景が広がっていた。そこは石油工場ではなく、**「時間軸を歪める粒子加速器」**を備えた極秘研究所だった。
「ビッグ・ディアマンテの真の貿易品は、石油じゃない……。**『過去の資源』**そのものだわ!」
名越の残党が操作する装置が暴走を始める。粒子ビームが渦を巻き、空間を切り裂いた。
「まずい、吸い込まれるわ! 全員、何かを掴んで!」
視界が真っ白に染まる。重力と嗅覚が逆転し、次に武尊が目を開けた時、そこは東京湾ではなかった。
燃え盛る京都の街。
空を覆う黒煙と、入り乱れる僧兵たちの怒号。
天文5年(1536年)――「天文法華の乱」の真っ只中だった。
「……嘘だろ。ここ、戦国時代かよ!?」
武尊が叫ぶ。
「……匂うわ。この焦げた松明の匂いと、血生臭い鎧の鉄の匂い。……そして、この戦場にそぐわない**『ビッグ・ディアマンテの廃液』**の匂いが」
変美は、現代から持ち越した消火器を握りしめ、馬を駆る武者たちの群れを見据えた。
歴史の特異点に飛ばされた探偵一行。武尊の父・軍司の影は、この戦国時代の戦火の中にも、確かに混じっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます