第41話 ゾンビパケット
名越のサーバーが消火器の粉末で白く染まり、異音を立てて停止した瞬間、宇都宮中のスマートフォンの画面が一斉に青白く発光した。
「……マサ、今よ! 潜伏している『種』を根こそぎ狩り取るわよ!」
■ 嗅覚のパターンマッチング:警告と削除
「所長、サイバーフォースセンターから緊急プログラムが届きました! 名越のドライブ・バイ・ダウンロードに対抗する、専用のウィルス対策ソフトです!」
マサが操作する端末上で、スキャンゲージが猛烈な勢いで上昇していく。
「……匂うわ。このプログラムが名越のコードを検知した瞬間の、『火花のような鋭い電子臭』。…… プログラムが名越のウィルスという『適合するファイル』を見つけ出し、**『警告!』の文字と共に一つずつ『削除』**していく匂いよ」
モニターには、街中に蔓延していた「ゾンビ・パケット」が次々と赤い点となって消えていく様子が映し出された。
■ 名越の崩壊:最後の悪あがき
「馬鹿な……! 俺のステルス・コードを、これほど早く検知する対策ソフトなど……!」
名越が床を叩き、喚き散らす。
「……名越、あなたは忘れていたのよ」
変美は、名越の指先から漂う**『復讐の冷たい汗』**を冷ややかに見下ろした。
「ウィルス対策ソフトの本質は、異常を『見つける』こと。私があなたの指先の脂から、サーバーに打ち込まれた『悪意の型(パターン)』を物理的に嗅ぎ取って、サイバーフォースに送ったの。デジタルの盾に、私の嗅覚が『最新の定義ファイル』を上書きしたのよ」
名越のタブレットに、冷酷なメッセージが表示された。
[ 全ウィルスファイルの駆除が完了しました。システムは正常です。 ]
「……おしまいね。あなたの野望も、その薄汚れたコードも。この街の空気は、もうあなたの毒を通さないわ」
■ 終焉の静寂
亮が名越の首根っこを掴み、パトカーへと引きずり出す。
「ITベンチャーの天才も、お縄になればただのコソ泥だ。あばよ、名越」
明は大聖堂の柱に長槍を預け、安堵のため息をついた。
「……やっと、スマホの通知音が静かになったな。宇都宮の夜には、この静寂がよく似合う」
変美は、ウィルス対策ソフトがクリーンアップを終えた後の、どこか**「消毒液に似た清潔なオゾン」**の匂いを感じながら、名越がかつて愛したであろう大聖堂の美しいクロケットの彫刻を見上げた。
「……マサ。明日の朝刊には、ウィルス騒ぎのことじゃなくて、大聖堂の鐘が美しく鳴ったことだけが載るといいわね」
宇都宮を飲み込もうとしたデジタルの疫病は、変美の鼻と最新の技術によって、跡形もなく消し去られた。
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