第33話 平和が戻る
メコン川の炎上から数日。変美たちが突き止めた「組織の最終目的地」は、やはり宇都宮だった。しかし、今回の敵はこれまでの泥臭い工作員ではない。粒子ビームを操る**「ハイテク密輸業者」**へと変貌を遂げていた。
■ 宇都宮・サウナ「北関東の湯」:密議の場
宇都宮駅近くの老舗サウナ。ここは組織の集合場所だ。
変美は男装し、女湯側から換気ダクトを通じて「匂い」を盗んでいた。
「……マサ、聞こえる? サウナの蒸気に混じって、**『潮風の塩分』と『最新型のサーバー冷却液』**の匂いがするわ。取引は始まっている」
サウナの中では、「漁師」を装った密輸グループのリーダーと、引退したはずの「ブルートレインの元車掌」が密談していた。車掌はかつての寝台特急のルートを悪用し、ネットで販売された拳銃を「鉄道部品」と偽って全国へ配送する密輸仲間だった。
■ 宇都宮大通り:バスジャック追跡劇
「バレたわ、逃げる気よ!」
密輸グループは駅前の路線バスに飛び乗り、乗客を人質にとって逃走を開始した。
だが、そのバスにはすでに、唐桶刑事と東武署の精鋭たちが刑事として乗り込んでいた。
「動くな! 栃木県警だ!」
バスの車内で激しい格闘戦が始まる。犯人の一人が隠し持っていた超小型粒子ビーム砲を起動させようとしたその時、変美が叫んだ。
「亮さん、明さん! 今よ!」
■ クリミナル・チェイス:ライトの閃光
並走する亮のスカイラインとマサのワゴン車。
「任せろ姐さん! 目眩まし(ブラインディング)の時間だ!」
亮がダッシュボードのスイッチを入れる。スカイラインのフロントに増設された高輝度HIDサーチライトが一斉に発光。
「くらえ!」
強烈な光の壁がバスの窓を突き抜け、密輸業者の視界を白く焼き切る。粒子ビームの照準が狂い、バスの天井を虚しく貫いた。
■ 終局:ブルートレインの亡霊
追い詰められた元車掌と漁師は、国道4号線を北上し、矢板方面の廃線跡へと逃げ込んだ。
そこには、組織が隠し持っていたハイテク密輸拠点――偽装された古い客車が置かれていた。
「……匂うわ。この古い車両の奥、『火薬』と『インターネットのルーターが発する熱』……。ここが、日本中の闇サイトに拳銃を流していた心臓部よ!」
変美がゴンゾウを放つ。ゴンゾウは車内のブレーカーを物理破壊し、粒子ビームのエネルギー源を遮断した。
「……おしまいよ、車掌さん。あなたの愛したブルートレインは、もう誰も地獄へは運ばない」
唐桶刑事が元車掌に手錠をかける。
漁師が隠し持っていた「海上取引の名簿」には、ラオスから宇都宮、そして東京の深海へと続く、すべてのネットワークが記されていた。
事件解決の翌朝。
変美、亮、明、そしてマサは、バンバ通りの餃子屋の暖簾をくぐった。
朝日の匂いと、香ばしい焼き油の匂い。
「……結局、一番いい匂いはこれね」
変美がレモン牛乳を一口飲み、微笑む。
「姐さん、次はもっと静かな事件にしてくれよ。ハイテクビームなんて、俺たちのワルサーじゃ分が悪すぎる」
亮が笑いながら、焼き立ての餃子を口に運ぶ。
宇都宮の街に、再び平穏な(そしてニンニク臭い)日常が戻ってきた。
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