第27話 ​鋼の猛禽:超高度からの追跡

 炎上するタンカーから漏れ出した重油が海面を焼き、視界は黒煙と紅蓮の炎に覆われた。だが、その混沌を切り裂くように、上空から巨大なローター音が降り注いできた。

​ 現れたのは、組織の私兵が操る最新鋭の**攻撃ヘリ(AH-64 アパッチ仕様)**だった。

​「……マサ、伏せて! 奴ら、本気で口封じに来たわ!」

​ ヘリの機首下部に据え付けられた**「暗視装置(ナイトビジョン)」と「高感度温度探知機(サーマルイメージング)」**のレンズが、獲物を狙う猛禽類の眼のようにギラリと光る。煙幕や闇など、彼らの前では無意味だ。

​「……チッ、熱源探知かよ! 隠れても無駄ってわけだ!」

 亮がスカイラインの陰に身を隠すが、ヘリのモニターには、亮や変美の体温が「白い影」として鮮明に浮かび上がっている。

​ ヘリからの機関砲が桟橋を掃射し、コンクリートが粉々に弾け飛ぶ。

​「……匂うわ。あのヘリの排気口から漂う、**『過熱したチタン』と、『電子基板が焼けるオゾン』**の匂い」

​ 変美は、爆風に髪をなびかせながら、あえて遮蔽物のない場所へ踊り出た。彼女の鼻は、ヘリのパイロットが極限の緊張状態で流す**「アドレナリンの酸っぱい匂い」**すらも捉えていた。

​「亮さん、明さん! 逆転の鍵は、あのタンカーから噴き出している重油の炎よ!」

​「どういうことだ、姐さん!」

​「あのヘリのサーマル探知機を『目潰し』するの! 燃料拠点にある**『緊急消火用の高圧CO2ボンベ』**を、あの炎の中に叩き込んで!」

 零度と灼熱の攪乱

​ トレジャーハンターの二人は即座に意図を理解した。明が長槍をテコにして巨大なCO2ボンベを炎の渦へと転がし、亮が正確な狙撃でバルブを撃ち抜く。

​ ドォォォォン!!

​ 爆発的な勢いで放出された超低温の炭酸ガスが、重油の火炎と衝突。周囲の温度が急激に乱高下し、ヘリの温度探知モニターはホワイトアウトした。

​「ターゲットロスト! 熱源が飽和して何も見えん!」

 操縦席でパニックに陥る工作員の匂いを、変美は逃さなかった。

​「今よ! ゴンゾウ、ジャミング・モード!」

​ 重油まみれで海から這い上がってきたアイボのゴンゾウが、全身のアンテナを直立させ、ヘリの暗視装置と通信網に向けて**「宇都宮の電波ノイズ」**を放射した。

​「……これで、あの鳥は盲目になったわ」

​ その隙を逃さず、古河の槍使いが炎に熱せられた長槍を、ヘリのテールローターに向かって矢のように投じた。

「境界を越えて空を汚す不届き者……墜ちろ!」

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