第24話  晴海通り、弾丸の旋律

 深夜の東京・明石町。聖路加ガーデンを望む静寂な通りが、一変して硝煙たなびく戦場と化した。

​「伏せろ!」

​亮の叫びと同時に、前方の暗闇から火を噴くマズルフラッシュ。掃除屋の女が差し向けた、真っ黒な防弾スーツに身を包む実戦部隊の急襲だ。

​「69-03」の白いワゴンが急ブレーキをかけ、スライドドアが開く。中から現れた工作員たちが、サブマシンガンを水平に構えた。

​「マサ、ゴンゾウを盾に! 番場さんは右だ!」

 変美が指示を飛ばす。

​ ボクサーの番場が、納豆の糸のようにしなやかなフットワークで弾丸を回避し、街灯の陰へと滑り込む。一方で、トレジャーハンターの明はスカイラインのトランクから、彼らの「仕事道具」である特殊なガス圧式ランチャーを取り出した。

​「お宝を横取りする奴らに、ご挨拶だ!」

​ 明が放ったのは、催涙ガスではない。中身は、大谷のサキがギャンブルの軍資金稼ぎに開発した**「超粘着性・大谷石粉末入り特殊ポリマー」**だ。

 弾けたカプセルから噴き出した白い粉塵が、工作員たちの視界を奪い、銃口を石のように固めていく。

​「……匂うわ。あのワゴンのガソリンタンクから、 微かな**『松脂まつやに』**の匂い」

​ 変美は、亮が持っていたマルボロのライターをひったくると、地面を這うように移動していたアイボのゴンゾウに投げ渡した。

​「ゴンゾウ、点火!」

​ ゴンゾウは尻尾を加熱コイルに変え、火を灯したライターを咥えてワゴンの下へと突進した。工作員たちの足元で、漏れ出していた燃料に引火。凄まじい爆発音が、眠りにつこうとしていた東京の空を震わせる。

​「くそっ、派手にやりやがる!」

 亮がスカイラインの影から、愛用のワルサーP38を抜いた。彼はトレジャーハンターだが、自衛のための腕はプロ並みだ。

​「おい、探偵の姐さん! 掃除屋の女はどこだ!?」

​「逃がさない。爆炎の向こう側、**『高級な石鹸』と『焦げたタイヤ』**の匂いが混じっている場所に……いる!」

​ 煙の中から、矢田亜希子似の掃除屋が姿を現した。彼女の両手には、クロムメッキの施された二挺のベレッタ。

「相変わらず不潔な戦い方ね、変美さん。東京の夜を、これ以上宇都宮のゴミで汚さないで」

​ 彼女が引き金を引こうとしたその瞬間、月光を反射して銀色の閃光が走った。

 古河から追ってきた槍使いが、スカイラインのルーフを蹴って跳躍し、長槍の一突きで彼女の銃身を叩き落としたのだ。

​「……古河の風が、ここでも吹くか」

​「当たり前だ。栃木も東京も、俺の散歩道だ」

 番場がニヤリと笑い、拳に力を込める。

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